iDeCoとNISA、税制改正で「得する人、残念な人」 メディアも見落とす加入条件とリスクに注意

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筆者が気になるのは、多くの報道が、新たなNISA制度の1階部分の20万円について「運用対象が低リスクの投資信託」と表現していることです。これはミスリードになりかねません。実際、今回の税制改正大綱のどこを読んでも、「低リスクの投資信託」などという記述は見当たらず、「つみたてNISAと同様の商品」としか書いてありません。

ところが、現行の「つみたてNISA」で対象となっている商品には、新興国に投資をするものもあります。「つみたてNISA」では販売手数料がなかったり、信託報酬が高すぎなかったり、長期積み立てにはふさわしいと考えられるものが対象となっていますが、決して低リスクというわけではないのです。報道を鵜呑みにしてしまうと、新たに創設される NISAは「低リスク=損をしにくい」と思うかもしれません。ある程度投資経験のある人なら、リスクを正しく評価できるでしょうが、投資初心者は勘違いする可能性が高いと思います。

速報は鵜呑みにせず、制度を自ら調べて理解しよう

今回の税制改正大綱について、大事な改正点なのに、報道ではあまり触れていないこともあります。例えば、iDeCoの「受け取り開始時期の範囲の拡大」は、人それぞれのライフプランに合わせて柔軟な受け取りができるようになりますから、よい改正点です。また、従来は企業型確定拠出年金を実施している企業に勤める従業員は、事実上iDeCoに加入することができませんでしたが、今回の税制改正大綱では加入できるように提言しています。

制度の本質や詳細について正しく理解し、検証されたものが報道されないと、多くの人が勘違いし、迷惑を被ることにもなりかねません。速報性を重視するテレビや新聞ではある程度やむをえないかもしれませんが、今後、さまざまなメディアに出てくる概要について、年末年始にじっくり読んでみてから新しい制度を利用するかどうか検討しても遅くないのではないでしょうか。

大江 英樹 経済コラムニスト、オフィス・リベルタス代表

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おおえ ひでき / Hideki Oe

大手証券会社で25年間にわたって個人の資産運用業務に従事。確定拠出年金ビジネスに携わってきた業界の草分け的存在。日本での導入第1号であるすかいらーくや、トヨタ自動車などの導入にあたりコンサルティングを担当。2003年から大手証券グループの確定拠出年金部長などを務める。独立後は「サラリーマンが退職後、幸せな生活を送れるよう支援する」という信念のもと、経済やおカネの知識を伝える活動を行う。CFP、日本証券アナリスト協会検定会員。主な著書に『自分で年金をつくる最高の方法』(日本地域社会研究所)、『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』(東洋経済新報社)などがある。

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