低年金の高齢者が、生活保護受給者にならずに年金で自活できる程度に給付を維持できれば、医療保険料や患者負担を自ら負担する分、税負担は少なくて済む。したがって、低年金の高齢者ができるだけ生活保護受給者にならないで済むような年金給付が必要となる。
何らかの追加措置が必要となるが、その一案が冒頭の厚生年金と国民年金の積立金の統合である。国民年金の給付水準の底上げのために、年金保険料を上げることなく、追加的な増税もすることなく、厚生年金(所得比例部分)の給付を減らしつつも基礎年金部分の給付を底上げする案である。そして、モデル世帯でも所得代替率が50%を割らないようにする。
年金生活者支援給付金で年金給付を底上げ
この利点は、追加的な増税も年金保険料の引き上げも避けられる点である。しかし、自らが払った年金保険料をほかの受給者への給付に充てる形で国民年金を救済する点で、納得が得られにくいという欠点がある。
その代替策となるのは、積立金を使わずに、税財源などで国民年金加入者の給付減に対応して追加的な給付加算をして、給付の底上げをすることが考えられる。消費税率の10%への引き上げ時に創設された「年金生活者支援給付金」はその目的を果たす仕組みである。
ただ、低年金者が今後増えると見込まれているため、支援給付金を維持するにしても、追加の増税がなければ財源を確保できなくなる。
厚生労働省は、冒頭に挙げた案を検討することを通じて、2025年の国会への法案提出を目指すという。これは、次の財政検証が行われる2024年の後を想定している。厚生年金積立金を使うのか、それとも追加の増税をするのか。低年金者が老後に生活保護受給者にならないような対応が問われている。
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