ただし、この所得代替率は、40年間厚生年金に加入し、その間に平均的な賃金を受け取る夫と、40年間専業主婦の妻がいる世帯(モデル世帯という)が受け取る給付水準である。それ以外のタイプの世帯が50%を上回るか否かは保証の限りではない。
国民年金のみに加入する単身高齢者は、40年間欠かさず保険料を払っていても、満額の基礎年金しかもらえない。国民年金のみの高齢者は自営業者や農業者だけでなく、職場で厚生年金には入れない非正規雇用の人たちも該当する。
前述のモデル世帯で得られる所得代替率の内訳は、夫の厚生年金が24.6%、夫婦がともに満額でもらえる基礎年金が2人合わせて26.2%となる。
将来、生活保護受給者が増える可能性がある
これに従えば、国民年金のみに40年間加入していた単身高齢者は、所得代替率で13.1%(=26.2%の半分)に相当する給付しか受けられない。仮に未納や未加入の期間があれば、給付水準はさらに下がる。ちなみに、2019年度の基礎年金(満額)の所得代替率は、1人分で18.2%である。
就職氷河期世代は長きにわたる非正規雇用者が多く、単身者も多い。40年間欠かさず保険料を納めても給付がこれだけ減るのに、保険料の納付が40年間に満たなければ、所得代替率が13%を下回る人が続出し、生活保護受給者が今以上に増える可能性がある。
2019年度の生活保護給付費は約3.8兆円。これが、2040年には対GDP比で倍増するという推計もある。生活保護給付費が増えるなら、年金とは別に税負担を増やさなければ財源を手当てできない。
とどのつまり、厚生年金積立金の一部を国民年金加入者の給付に充てるべきでないと突き放しても、国民年金にしか加入していない低年金の単身高齢者が生活保護受給者になると、回り回って税金の形で追加的な負担が増えることになる。
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