「金のなる木」よりも「問題児」に投資すべき理由

年末年始に復習しておきたいビジネスの鉄則

なぜ、ポートフォリオがイノベーションにとって大切なのでしょうか?(写真:Peshkova/iStock)
「今は儲かっているビジネスでも、いずれジリ貧になる。だから早いうちに先手を打って、稼ぎ頭の優秀な部門に予算と人材を集中させて、新たなイノベーションを起こしてやろう」――新年に向けてそのようなプランを立てている方もいるかもしれません。しかし、このような考え方はマネジメントの大原則に反しているようです。経営学者の清水洋氏の著書『野生化するイノベーション』から、その理由を考えてみましょう。

老舗劇場の人気が衰えないワケ

多くの企業が経営資源を効率的にマネジメントしてイノベーションを生み出そうとしてきました。そして、組織の中でイノベーションをマネジメントする際に重要になってきたものがポートフォリオです。

なぜ、ポートフォリオがイノベーションにとって大切なのでしょう。劇場の例で考えてみましょう。ロンドンのイズリントンにサドラーズウェルズという劇場があります。イズリントンは、今ではすっかりおしゃれでポッシュ感のあるエリアですが、少し入るとロンドンの公営住宅があったり、いろいろな階層な人が住んでいるところです。

サドラーズウェルズ劇場の歴史は古く、17世紀にまでさかのぼります。そこから、再建や移転を経て、現在、ロンドンで新しい芸術作品を生み出す中心的な劇場の1つです。伝統的な劇場から、新しい作品を生み出すというのはなかなか珍しいのですが、なぜ、サドラーズウェルズはそれができているのでしょう。その秘密が、ポートフォリオなのです。

定番の演目だけを繰り返し上演していては、お客はそのうち飽きてしまいます。長期的に劇場に多くの人に足を運んでもらうために、サドラーズウェルズでは、オペラやコンテンポラリー・ダンスなどでかなり実験的な演目もやっています。カンフーものもあります。もちろん、実験的ですから、失敗するものもあります。むしろ失敗のほうが多いぐらいです。

しかし、実験ですから、失敗は成功への必要な試行錯誤のステップと受け止められます。その中から、ヒット作が生まれてくればいいという考えなので、実験的作品については収益性を脇に置き、とにかく「新しさ」と「数を打つ」ことが大切とされます。その一方で、定番の作品ではしっかりと稼ぐことが重要です。実験的な試みをバックアップする収益性が、求められるわけです。

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