8050問題「親亡き後の死体遺棄事件」を生む悲惨 中高年引きこもりは支援から取りこぼされる

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肝心の真実が隠されてしまったら、2度と悲劇を起こさないための教訓にはつながらない(写真:Fast&Slow/PIXTA)
ひきこもる子を持つ親が高齢化していくとともに、親亡き後も親の遺体と同居し、死体遺棄事件につながる事例が、全国で続発している。拙者『ルポ「8050問題」高齢親子“ひきこもり死”の現場から』より一部抜粋し、現場の声をリポートする。

親の死体遺棄事件が続発

「私に万一のことがあったら、残された子はどうなるのか──」

そう親たちは、不安を口にする。親が誰にも相談できないまま悩みを抱え込み、社会から孤立している「8050世帯」で事件は起こっている。

2019年2月1日、横浜地裁の604号法廷。横浜市金沢区の自宅で、2018年1月に亡くなった当時81歳で介護中だった母親の遺体を約10カ月にわたって放置したとして、2018年11月29日に死体遺棄容疑で逮捕された長女(50歳)の初公判を傍聴した。

この日は、長女の被告人質問が行われていた。

なぜ、親の死後、警察などに通報できなかったのか。

法廷での証言によると、長女は2015年頃、寝たきりになった母親の介護のために仕事を辞め、以来、ひきこもり状態になった。母親の介護は長女が1人で担っていたという。

区役所などによると、2018年11月27日、町内会から「姿を見かけない高齢者がいる」という連絡があり、区の職員が高齢者の健康状態を確認しようと自宅を訪問した。ところが、長女は「母は体調が悪いからダメです」と繰り返すだけで、区職員は母親に会わせてもらえなかった。

区職員が翌日改めて自宅を訪問したところ、今度は「母は会いたくないと言っています」と長女から断られたため、おかしいと思った役所側が警察に通報。警察が母親の遺体を発見した。遺体は腐敗していて、死因が特定できなかったという。

区の担当課長は、長女の状態について「これまで関わりがなく、ひきこもりと言えるのかどうかさえ、わからない」と話す。本人や家族の側から相談がないと、役所から介入するのは難しい。せめて「困り感を発信してくれれば、私たちにもできることはあった」という。まさに、「8050家族」は、制度の狭間に置き去りにされてきたことを物語っている。

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