「いだてん」から流出した大河ファンのシニアが、「ポツンと一軒家」の視聴者として収容された感がある。わかりやすい番組名や(参考:本連載「『ポツンと一軒家』の人気に貢献する番組名の妙」)、番組内容が、単なる「一軒家めぐり」にとどまらず「一軒家に住む人の数奇な人生めぐり」となっていて、ある意味、大河ドラマ的な要素を含んでいたことも、「いだてん」にとっては不幸だったろう。
しかし、筆者が考える最大の視聴率低迷理由は、「視聴率低迷という報道の過熱」である。毎週月曜日にネット上で拡散される「『いだてん』また視聴率低迷」という文字列が、新規層、特にヤング~ミドル層の新規流入を阻害するに十分な(逆)効果をもたらしたと思うのだ。
「『今売れてます』という情報がさらなる『売り』を生む」(ゆえに多くの広告が「今売れてます!」と主張する)という傾向は、今に始まったことではなく、むしろ沈静化してきていると思われるのに対し、「今売れてません」というネガ情報は、SNSの普及の中で、さらに影響力を強めている。
「視聴率低迷という情報がさらに視聴率を低迷させる」――「視聴率が低迷しているのだから、どうせつまらないドラマなんだろう」と表面的に解釈された結果、新規流入が滞った。「いだてん」視聴率低迷の背景には、このような「風評被害」の部分も大きいと見るのだ。
宮藤官九郎ファンは神最終回を確信している
それでも1年間、「いだてん」を見続け、最終回まで完走しようとしているコア層はどのような人たちだったのだろうか。
コア層のコアを成すのは「クドカン(宮藤官九郎)ファン」だろう。そしてクドカンファンは、12月15日の最終回が「神回」=「神最終回」となることに、強い確信を持っている。
理由として、1つには、これまでの「クドカンドラマ」の「神最終回」の記憶があるからだ。その代表は、宮藤官九郎が世に出るきっかけとなったTBS「池袋ウエストゲートパーク」(2000年)の最終回だろう。
「Gボーイズ」と「ブラックエンジェル」という、今でいう「半グレ集団」の抗争を、マコト(長瀬智也)がものの見事に収める回。脚本、演出、撮影、演技、すべてのピースが最高のバランスで組み合わさった「神最終回」だった。
その他、「タイガー&ドラゴン」(2005年)や「うぬぼれ刑事」(2010年)、もちろん「あまちゃん」(2013年)の最終回も忘れることができない。「宮藤官九郎の最終回に(ほぼ)ハズレなし」――クドカンファンの確信するところである。
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