また、1年間の脚本の中で撒き散らされた複雑な「伏線」が、最終回にて一気に「回収」されそうなことも、「神最終回」を予感させる大きな要素である。
「いだてん」の脚本は、「金栗四三ストリーム」「田畑政治ストリーム」「古今亭志ん生ストリーム」の3つの流れが複雑に絡み合っていて、そのあたりの「大河らしくなさ」が、先に述べたように視聴率低迷につながったと見るのだが。
しかし最終回は、その3つの川の流れに置かれた細かな「伏線」が、東京五輪の開会式当日という「大河」に流れ出して、やっとひとまとまりに関係づけられる大団円(大回収)になりそうだ。伏線→回収の快感。それは1年間、見続けた者だけが得られる「継続者利益」である。
そして「神最終回」を確信させる最大の理由として、その内容が、今という時代といよいよシンクロしてきそうなことがある。
「いだてん」神セリフを1つ挙げるとすれば、第40回「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で、田畑政治(阿部サダヲ)が放った「アジア各地でひどいこと、むごいことしてきた俺たち日本人は、面白いことやんなきゃいけないんだよ!」だ。
「面白いこと」――「いだてん」というドラマの本質は、前回の東京五輪含む、日本のオリンピック史への実績・功績は、「国家」や「政府」ではなく、オリンピックやスポーツを純粋に「面白い」と思い続けた個々人の奮闘によるものだ、というメッセージだと思う(このメッセージを、番組のマーケティングにおいて、もっと強調するべきだったのではないか)。
また、結果としてこのメッセージは、来年の東京五輪を純粋に「面白い」ものにしてやると思い続ける個人が見えない現状への、間接的なアイロニー(皮肉)となっていた。そんなメッセージの集大成となりそうな最終回は、2020年の東京五輪を控えてバタバタとしている今という時代へのメッセージ性を強く帯びた「神最終回」となるはずだ。
今年のNHKの番組は攻めていた
「俺たち日本放送協会(NHK)は、面白いことやんなきゃいけないんだよ!」――そんな考えがあったのか、今年のNHKドラマは魅力的なものが多かった。個人的に印象に残ったものだけでも「みかづき」「腐女子、うっかりゲイに告る。」「これは経費で落ちません!」、そして絶好調の「スカーレット」と、民放よりも意欲的な作品が並んだ。
その中でも「いだてん」のクオリティーは非常に高かった。今後、日本ドラマ史を代表する作品として認められていくと思われる。後世に残るのは、視聴率の低迷という一時の話題ではなく純粋な作品性なのだから。
前回(第46話)の最後のナレーションは「明日(注:最終回で描かれる東京五輪開会式当日のこと)はいちばん面白いことが起こるはずです」と締められた。これはもちろん神セリフ「面白いことやんなきゃいけないんだよ!」を受けたものだ。
今からでも遅くはない、とは言わないが、最終回だけでも見てみる価値はあるだろう。オリンピックも、オリンピックを描いた「いだてん」の「神最終回」も、参加することに意義がある。
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