「イントゥ・ザ・スカイ」が描く19世紀の気球旅行 アマゾンスタジオ制作のアカデミー賞期待作

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ハーパー監督は、本作を制作するにあたり、「観客が気球に乗っているような経験をさせたい」と思ったという。そのため、19世紀当時のガスで駆動する気球を再現したレプリカを建造。実際にそれを飛ばしたシーンも撮影している。

高度1万メートルの世界を再現するために、気球のまわりに冷却ボックスを設置。リアルな極寒空間を実現させたという ©2019 AMAZON CONTENT SERVICES LLC.

「気球での撮影は本当に特別だった。気球は何が起こるかわからないし、どこに着陸するかもわからないから、風に身を委ねるしかない」とジョーンズが語れば、レッドメインも「気球はつねに熱狂の的だった。ある日の朝、僕らはオックスフォードの上空を飛んでいた。人々は見上げて、僕らに手を振っていたんだ。どこに着陸するかわからなかったり、空中に身を任せたりすることが人々を魅了するんだよ」と付け加える。

アマゾンスタジオが制作・配給

高度1万メートルという世界を、われわれはなかなか想像できるものではないが、上空では酸素が薄くなり、そして凍るような寒さが襲ってくるという。撮影所では、その世界を再現するために、気球のまわりに冷却ボックスを設置。レッドメインもインタビューで「あれは演技じゃなくて、本当に凍えていたんだよ」と語るなど、役者陣は過酷な状況と戦っていた。そんな彼らのリアルな感情が、観ているほうにも伝わってくる。

本作は、アメリカのAmazon.comの映画部門であるアマゾンスタジオが制作に参加。同スタジオが配給を担当した、2016年の映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』や『セールスマン』では、配信系の映画会社としては初となるアカデミー賞での受賞を果たすなど、近年、存在感を見せている。それだけに、本作も早くもアカデミー賞への期待が高まっている。

都会の中で暮らしていると、なかなか空を見上げる機会は少なくなる。だが、そんな時代だからこそ、スクリーンを見上げながらこの映画を観ることで、彼らの空への憧憬が胸に迫ってくるようだ。

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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