自動でレモン栽培、「広島流デジタル化」の勝算 広島の湯﨑知事に聞く地方のデジタル活用

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――行政が保有するデータを匿名で利用して事業者と新しいサービスを創出することも検討しています。

行政が保有するデータを匿名にしてオープン化することで新しいサービスの創出を目指している。ひろしまサンドボックスの実証実験で得られたデータもあわせて、複数のシステムでデータを共有・利用できる「データ連携基盤」に蓄積することを検討している。

――プライバシー保護について県民の理解を得る必要はないですか。

個々の実証実験や事業を進めていく中で課題が出てくるだろう。プライバシーの問題以外にも、もっと広い意味で、データ公開のルール作りが必要だ。

例えば、自分の医療データについて、製薬の開発のために個人情報を隠す形でなら利用してもいいが、薬局が薬を売ろうとするのに使われるのは嫌という人がいる。また、利用はよいが、対価として金銭を支払ってほしいということも考えられる。

データ提供者が主体性を持つ

――個人情報を預託する「情報銀行」のようなやりとりの中で、データを行政と市民がやりとりするというようなことは考えていますか。

「広島県でデジタルビジネスをやってみたいと思ってもらえるようにしていきたい」と意気込みを語る湯﨑知事(撮影:梅谷秀司)

そのようなものも考えたが、情報銀行は大量のデータをどこかに蓄積しなければならない。それよりもまずはそれぞれの行政機関や医療機関ごとにデータベースが求められるだろう。そこで蓄積されるデータをどのように交換するかのルールや形式、やり方が重要になる。

データ流通をいかに円滑にするかを考えると、国全体だと大きすぎる。どこかで区切ってやる必要がある。産業別だと従来とあまり変わらない。産業横断的にやろうと考えれば、どこかの地域の枠で切る必要がある。それが広島県がやろうとしていることだ。

――データというとGAFAのような大手プラットフォーマーがまとめるイメージですが、地域の課題は各地域ごとに解決していったほうが良いということですか。

そうだ。それぞれのデータについてデータ提供者が主体性をもってやっていくということが根底にある。データの所有権は事業者のものではなく、データの発生源のものだ。

GAFAはサービスを提供するかわりに、無料で利用者のデータを吸い上げている。われわれが目指しているものはそうではなく、個々のデータ提供者がデータを自ら利活用できる仕組みだ。

個々人がデータの価値や使い方を判断するのは難しく、中間的な信託的なものが必要になるはずだ。まだデータを交換するだけのデータ量が生成されていないが、行政としてそういった存在になれるかを考えながら、地方自治体としてデジタル化を進めていく必要がある。

――1~2年後の具体的な目標やイメージはありますか。

ひろしまサンドボックスそのものには数値目標はない。2020年度予算と2021年から実行する広島県の長期計画の中で、デジタル化による変革の進め方や目標について検討する。

今後、デジタルトランスフォーメーションが進んでいくのは間違いない。広島県でデジタルビジネスをやってみたいと思ってもらえるようにしていきたい。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。1994年台湾台北市生まれ、客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説を研究している。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、映画・アニメが好き。

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田中 理瑛 東洋経済 記者

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たなか りえ / Rie Tanaka

北海道生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。ゲーム・玩具、コンテンツ、コンサル業界を担当。以前の担当は工作機械・産業用ロボット、医療機器、食品など。趣味は東洋武術。

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