自動でレモン栽培、「広島流デジタル化」の勝算 広島の湯﨑知事に聞く地方のデジタル活用

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――地方の一つである広島県のプロジェクトに企業が参加するのはハードルが高いはずです。彼らにはどんなインセンティブがあるのですか。

ひろしまサンドボックスは、「3年間で10億円用意するので誰も作ったことのないものを作ろう」という取り組みだ。広島県はデジタル化のプロジェクトに3年間で10億円を投資する。これは自治体の予算として大きい。これだけ大規模だと企業や人のネットワークも生まれ、行政のプロジェクトが単発で終わらないという安心感を民間企業も持てる。だから700を超える企業や組織がひろしまサンドボックス推進協議会に参画してくれた。

湯﨑英彦(ゆざき・ひでひこ)/1965年生まれ、広島県出身。東京大学法学部卒業後、1990年通商産業省入省。2000年に通信会社の副社長を経て、2009年に広島県知事に初当選。現在3期目(撮影:梅谷秀司)

行政の事業は民間企業に成果を求めがちだが、ひろしまサンドボックスでは失敗しても構わないというスタンスでやっている。

2018年に実証プロジェクトの案件を公募し、すでに9件が始動している。例えば、育成状況を把握するセンサーを用いたレモン栽培の自動化や、ドローンなどを用いたかき養殖の支援などがある。

【2019年12月11日12時5分追記】9件の実証プロジェクトに関する初出時の説明を上記のように修正いたします。

ほかにも約200社が実証プロジェクトの提案や実施に関心を持っている。単にお金だけでなく、行政のサポートやネットワークづくりも評価されていると実感している。

ドローンが役立つ場面はたくさんある

――10億円の財源は税金ですが、「失敗していい」ということに批判の声はないのでしょうか。

そういう声はあまりない。成果の定義の問題だ。ある問題を解決するために10億円使いますということだと、その問題が解決されなければいけない。今回のプロジェクトの目的は「これを使って新しいことに取り組んでみましょう」ということだ。

2019年も20~30のプロジェクトが動き始めている。新しいことをやっていることを評価してもらいたい。

――国家戦略特区制度の活用も検討しているようですが、プロジェクトを進めるうえで規制の壁にぶつかることもあるのでしょうか。

広島県は戦略特区でドローンの活用方法についていろいろな取り組みをやってきたが、規制を超えて何かをやりたいという提案はない。規制よりもルール整備の遅れに問題があるといえる。

実際、ドローンが役立つ場面はたくさんある。広島県南東部にある尾道は坂が多く、住宅地でも車が通れない道がある。ドローンで荷物を運べれば荷物の配達はすごく楽になるが、家屋や人の上を飛ばさないといけないので、事業者の心理的なハードルも高い。ドローンをたくさん飛ばすためのルールが整備されていないということも、規制打破の要求が出てくるほど活用が進んでいない要因だ。

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