母になっても恋愛する「40代女性たち」の心情 『恋する母たち』の作者、柴門ふみ氏に聞く

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「それから5、6年前、一緒に暮らす男性の浮気が、結婚式の1カ月前にバレて破談になった20代後半の女性に出会いました。彼女が、『こんなにひどい目に遭わされたけど、まだ彼が好きなんです』と言うので、なぜかと聞いたら『1度人を好きになって、クイが心に打ち込まれたら、抜けるまで嫌いになれないんです』と。今の若い女性でも、結局恋愛をすると同じ感情で動くんだな。これで、描けると思ったんです」

「不倫」という言葉が使われ出した1980年代、柴門氏がに描いた『女ともだち』には、既婚男性が独身女性と関係を持つ不倫が描かれていた。今、既婚の中年女性が恋する話が説得力を持つのは、優子のように自立する女性が増え、時代が変わったためだろうか。

不倫に走る人の割合は今も昔も変わらない

「『女ともだち』を描いた頃は、自立している女性が少なかった。でも今は違う。そして確かに、働いている女性は出会う人が専業主婦より多い。でも、本当に自分を刺激してくれる異性はそんなにいないと思います」と柴門氏は言う。

柴門ふみ(さいもんふみ)/1957(昭和32)年、徳島県生れ。お茶の水女子大学卒。1979年漫画家デビュー。『東京ラブストーリー』『あすなろ白書』『同窓生――人は、三度、恋をする――』など多くの恋愛マンガを手がけるほか、『恋愛論』『ぶつぞう入門』『愛の哲学』などのエッセイ集も出している。(撮影:尾形 文繁)

「それでも現実に不倫へ走る人の割合は、昔から変わらないのではないでしょうか。映画や文学、ドラマでも、義理の弟に言い寄られる団地妻のよろめき、みたいな描かれ方はあった」

それでも、現代は恋愛が難しくなったと言われ、恋をしない「無性愛者」という存在もクローズアップされる。同性愛も市民権を得たし、二次元の登場人物に焦がれる人もいるなど、恋愛模様は多様化したのではないだろうか。

「恋する人間の感情の動きは、シェイクスピアや紫式部の頃と変わっていないと思うんです。今の若者は恋愛しなくなったと言われますが、淡い恋を扱ったフィクションは人気がありますし、ラブソングも相変わらず売れている。

人間は、生まれ落ちた瞬間に、スマホのアプリのように恋心がデフォルトで入っているのではないかと思います。エロスの塊というか、生命力のようなもの。それが、ある年齢では初恋になり、恋愛、よこしまな性欲、と形を変えて顔を出してくる。モヤモヤした気持ちを『恋だわ』と名付けているだけで、実は性欲かもしれないし、初潮や閉経の頃だったら、ホルモンの乱れかもしれない

二次元のキャラクターやアイドルへの憧れも、若いカップルが、実際にデートしたら妄想の中でイメージしていた理想の恋人と違う、と3日で別れたりするのも、相手を何も知らないで憧れるという意味で同じです。ただ、現実の恋愛で、理不尽なことや我慢しなければいけないことを乗り越えられれば、リアルの恋愛のほうが上と言えます。妄想は、自分でイメージを塗り替えられますから」

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