母になっても恋愛する「40代女性たち」の心情 『恋する母たち』の作者、柴門ふみ氏に聞く

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それをとびきりロマンチックに描くのが、マンガの仕事だと柴門氏は位置づける。『恋する母たち』は、王道の恋愛映画などからもヒントを得て描かれている。

年下の男性に思い込まれる優子の恋愛は、年上の女性に焦がれる男性を描いた1968年のフランス映画『個人教授』などがベースになっている。浮気された者同士の杏と巧の関係は、ウォン・カーウァイ監督の2000年の作品、『花様年華』。丸太郎に振られたまりが夫とセックスする場面は、1979年のジュディ・オングのヒット曲「魅せられて」の、好きな男に抱かれながら違う男の夢を見る女のイメージと通じている。

大人の恋は家族の数だけ「しがらみ」も多い

マンガで恋したい気持ちを昇華させ、現実には行動を起こさないでほしい、という思いも柴門氏にはある。

「多くの人は、結婚するともうアプリを起動しないで一生を終える。大人は、経験値があり社会性も身に付けているので、自分の感情だけに基づいた衝動的な行動がどれだけ世の中に迷惑か、自分も人も傷つけるかがわかる」

しかし、柴門氏が不倫を奨励しないのは、それがモラルに反するからではない。

「人の恋愛は、要するに感情がもとなので、いいとか悪いとかは誰にも言えない。不倫している芸能人をたたいてやろう、というのはあまり意味がないことではないかと思います。

本作で描いた40代は、子どもの手が離れたりして余裕もできる年代。私も40代の頃、同窓会で昔の彼氏や同級生に口説かれ、実は彼こそが本当の恋人かもしれないと舞い上がった人から相談を受けました。でも『違う。目を覚ませ』と止めました。実際はマンガみたいにうまくいかないし、自制が利かなくて感情に走ったりする。実際に恋に走って失敗した人も少なくないです。

ダブル不倫で再婚したカップルも何組か知っていますが、いつまで経っても元の家族の妻や子どもが顔を出してくる。きついと思います。家族の人数だけしがらみが増えるから」

では、結婚や家族とは何だろうかと聞くと、次のように柴門氏は言う。

「夫婦には時間と空間を共有することで、切りたくても切れない絆が積み重なる。それは親子でも同じだと思います。同じテレビ番組を観て、同じ料理を食べて。お父さんが言っていることに対して返事をしなくても、言われたことは体に積み重なる。

そこへいきなり新しい恋人が入り込もうとしても難しい。もちろん、嫌なものも積み重なるわけで、それがいっぱいになって『もう無理です』、と離婚や卒婚をするカップルもいる。

これが正解というものがないので、恋や結婚がフィクションの題材になるし、みんなの興味を引きつけるんだと思います」

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