ドコモがアマゾンに連携を持ちかけた「必然」 他社サービス取り込み、価格競争から一線

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そこでドコモが活路を見いだそうとしているのが、今回のような強者とのタッグだ。

人気の他社サービスとの組み合わせであれば、そのサービスを使う他キャリアのユーザーを呼び込む契機になる。さらに、アマゾンとの連携は単価を押し上げる効果も期待できる。キャンペーンによってスマホでプライムの動画や音楽を楽しむ人が増えれば、大容量の「ギガホ」を使う利用者の割合も増やせるからだ。

ドコモの目線の先にあるのは、2020年春に商用化を控える5Gだ。「超高速」「大容量」といった特徴を持つ5G時代には、動画サービスも超高画質になるだけでなく、視聴者の好みに応じて自由にその視点を変えられるなどの進化が見込まれている。吉澤社長は「サービスを融合したような形でのプラン、取り組みは5Gにもつながっていく」と構想を語る。

共通の敵を持つ「同志」

他社サービスと連携する動きは、通信キャリア業界で活発化している。

KDDIは昨年夏から、携帯料金に米動画大手ネットフリックスのサービスを組み入れたプランを提供している。ソフトバンクはグループのヤフーと連携して、ヤフーの通販やオークション、コンテンツサービスとの相互送客に積極的だ。また、来春にキャリア事業に本格参入する楽天モバイルは、親会社のEC大手楽天とのセット利用での大きな特典を打ち出してくると見られている。

手を組んだ両首脳。この組み合わせは「必然」だったようだ(編集部撮影)

ドコモもすでに今春からウォルト・ディズニー・ジャパンと協業して動画サービスを提供するなどしているが、他社がスマホ周りのサービスとの連携を強める中で、多くの利用者を持つ強力なパートナーとタッグを組むことが必要だった。今回のアマゾンとの連携は、大きなカードとなりそうだ。

ドコモは自前の通販サービス「dショッピング」を持つものの規模は小さく、アマゾンとの競合はあまり気にすることがなかったことも幸いしたようだ。

ドコモのある幹部は、ソフトバンクや楽天モバイルが自社グループの通販サービスがアマゾンと激しく競り合っていることを念頭に、「他社はアマゾンとは組みにくかったのではないか」と話す。共通の敵を持つ「同志」として、この組み合わせは必然だったといえそうだ。

奥田 貫 東洋経済 記者

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おくだ とおる / Toru Okuda

神奈川県横浜市出身。横浜緑ヶ丘高校、早稲田大学法学部卒業後、朝日新聞社に入り経済部で民間企業や省庁などの取材を担当。2018年1月に東洋経済新報社に入社。

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