激化する「ぺんてる株争奪戦」、揺れるOBたち OBたちに宛てられた2通の手紙の中身とは

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「株主の皆様へ」と題する手紙は、次のように続く。

「ぺんてるの経営陣は、ぺんてるのために、株主の皆様のために、プラス社からの提案であるジャパンステーショナリーコンソーシアム合同会社(JSC)による当社株式の買受け提案を承諾しました。是非、コクヨへの敵対的な買収の提案に応じることなく、ぺんてるの経営陣が最善と考えるJSCからの買受けにご応募いただきますよう、そして、将来にわたりぺんてるの価値を守っていただきますよう、ひたすらにお願い申し上げる次第です」

水谷氏は今年6月に開かれたぺんてる株主総会の前にも、経営陣に自社株買いを求める株主提案がなされたことに、「(この提案が通れば)会社の存続そのものを危うくしかねない」と、提案に賛成しないよう株主やOBたちに呼びかける役を買って出た。ぺんてる経営陣にとっては、どこまでも自分たちの味方をしてくれる後ろ盾のような存在だ。

暗証に乗り上げたプラットフォーム構想

一方、11月24日付で「ぺんてるを愛する皆様へ」というメッセージを出したのが、ぺんてる元専務でOB会の会長を務める池野昌一氏だ。

池野氏は「今回のコクヨとプラスの一連の騒動に多くのOBの方々がご心配され、株主の皆さんも頭を悩ませていらっしゃることでしょう。私にもOBの方々から相談が寄せられています」とOBらの苦悩を推し量る。そのうえで、「私は、現在のぺんてる経営陣の考え方には大反対です」とプラス&ぺんてる連合に反対する意向を示した。

池野昌一氏がぺんてるの株主に送った手紙(編集部撮影)

その趣旨は、JSCが買い取った株は実質的にプラスのものになるが、それでいいのかというもの。「プラスの昨今のM&Aは、その結果をみても乗っ取りに近いようなブランド軽視の事例もあります。そしてぺんてるの有力卸チャネルの皆様もプラスの強引なやり方(メーカー販社連合)には強く反発しています」。

メーカー販社連合とは、プラスとぺんてるの2社が軸となって国内営業窓口を一本化し、新たなプラットフォームを築く構想のことだ。これまで文具メーカーはそれぞれ独自の卸・販売店網を築き上げてきた。それを両社で統一して、国内販売の強化を図ろうとした。

販社連合にはもう一つの狙いがある。「対コクヨ」政策だ。連合にはプラスとぺんてるのほか、ラベルプリンタ「テプラ」をヒットさせたキングジムや、「セロテープ」で有名なニチバンなども合流する構想があった。そうした連合を作ることで、規模に勝るコクヨに対抗しようとしたのだ。販売連合はプラス経営陣が主導する形で進められ、昨年5月には新社名案を「コーラス」と発表、社長にぺんてるの和田氏が就く案までできあがっていた。

ところが、足下から反旗が上がる。ぺんてる社員、とりわけ販売畑の従業員たちが、「これまで協力してくれた卸売会社を裏切ることになる」「雇用が維持されるのか不安が残る」といった理由で反対したのだ。全国の文具流通業企業の大手複数社からも反対声明が出され、販社連合は暗礁に乗り上げた。

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