新聞やラジオ局がチャンネル持つVoicyの正体 入念な準備は必要なく収録から配信まで簡単
――他方、最近では企業が開設するチャンネルも目を引きます。
きっかけはやはり、スマートスピーカーの登場ですね。2017年あたりからGoogleやAmazon、LINEがこの分野に参入し始めたものの、各社とも「日本には音声コンテンツが少ない」という悩みを持っていました。
そこでわれわれがコンテンツパートナーとして提携することになり、それがきっかけで新聞社のニュースを配信するなど企業チャンネルの配信がスタートしたんです。
また、野村証券との取り組みの存在も大きかったですね。証券情報というのは1日3回、正確かつ迅速に情報を伝える必要があります。具体的には、テキストで送られてきた内容を30分以内に音声化して発信しなければならず、その業務フローを構築するいい機会になりました。
――既存のラジオ放送局である文化放送が、Voicyにチャンネルを持っているのも興味深いですね。これにはどのような目的があるのでしょうか?
僕らがVoicyを始める際に最も意識したのは、「ラジオの敵ではない」と周知させることでした。実際、ラジオとVoicyには、映画とYouTubeほどの違いがありますし、ユーザー層も違います。僕自身、父親がアナウンサーであったこともあり、ラジオの魅力はよく理解しているつもりで、上手に組むやり方が絶対にあるはずだと考えました。
ラジオが台本ありきで入念な準備をして番組を作るのに対し、Voicyはその時その場から短尺でコンテンツを発信できる。これは大きな違いで、それぞれのよさがあります。
僕らとしてはラジオが持つノウハウやネットワークを活用させていただきたいし、ラジオの側からすれば、僕らが持つユーザーデータは魅力的なはず。やはり、放送後に視聴状況のデータが取れたり、リスナー情報がたまっていったりするのはITならではですから、ラジオ局に限らず、今後もさまざまなメディアといい形でコラボできると確信しています。
No.1ボイステックカンパニーを目指す
――現在、Voicyはどのような収益モデルを採っているのでしょうか。
今この段階で言えば、まだまだもっと音声コンテンツのプラットフォームを広げるために、出資を募って事業を育んでいこうというのがメインです。そのうえで、前述の企業チャンネルによって収益を得たり、1つひとつのチャンネルにスポンサーをつけたり、企業内の社内報を声で届ける「VoicyBiz」というクローズドのサービスを提供したりと、さまざまな施策を打っています。
――今まさに、急速に事業の領域を広げている様子が伝わってきます。向こう1~2年の近いスパンで見た場合、Voicyが目指すものは何でしょう。
まずはVoicyを日本で1番面白い音声コンテンツが集まっている場所にしたいというのが1つ。そして、耳で情報を得る習慣が根付くことで、人々が自分の生活が少し豊かになったことを実感できるといいですね。
また、われわれは音声の技術で世界を引っ張るボイステックカンパニーになるという、強い意志を持っています。そのためには音声だけでなく、AIを始めとするテクニカルな領域をすべて取り込んでいかなければなりません。正直、人手不足でなかなか手が回っていないのが実情ですが、先を見据えながら今やるべきことに邁進しています。
――まだまだ音声コンテンツを取り巻くマーケットは、無限の可能性を秘めていそうですね。
最近ではまだ字を読むことができない子供が、スマートスピーカーに話しかけて検索をする、というケースが少なくありません。つまり文字を覚えるより先に音声検索を修得する、いわばボイスネイティブ世代が生まれつつあるわけです。こうした世代が台頭することで、音声コンテンツとの向き合い方も大きく変化するはずで、その時にわれわれは技術で世界を牽引するプラットフォームになっていたいですね。
(取材・文/友清 哲 編集/ノオト)
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