新聞やラジオ局がチャンネル持つVoicyの正体 入念な準備は必要なく収録から配信まで簡単
――その点、ツールとしてのVoicyは、収録から配信までのプロセスが驚くほど簡単で、発信側のハードルを大きく下げました。
動画がテレビ、YouTube、TikTokとフォーマットを変え、テキストが本からブログ、SNSと変化していったのに対して、音声はずっとラジオ一本やりでした。これだけ技術や文化が変わっている中で、ラジオだけが今日まで変わらず使われ続けてきたのは奇跡的です。
そこで音声コンテンツも、インターネットにフィットした新しいフォーマットを作り、リスナーにも発信者にも新しい音声コンテンツを提供するべきだと考えました。Voicyではボタン1つで音声がチャプター分けされ、自動的にバックノイズがカットされ、BGMがつく。とにかく配信側のハードルを下げることに注力しています。
――ポッドキャストとのすみ分け、あるいは競合についてはどうお考えでしょうか。
確かに、「ポッドキャストとどう違うの?」というのは、僕らがよく聞かれる質問の1つです。Voicyのコンセプトには、ポッドキャストと大きく2つの違いがあります。
1つは、われわれが作ろうとしているのはライフフィットメディアであるということ。モニターの前に座らなければ情報が得られない時代はもう終わりで、スマートスピーカーのように、生活内の行動を止めることなく情報が得られる環境を当たり前にしたい。声で指示して、声で返ってくるのが普通になれば、メディアに対するファーストリーチを声が握ることも可能でしょう。僕らはこのプラットフォームを取りに行きたいと考えています。
もう1つは、Voicyはあくまで“人”を届けるメディアであるということ。文字でも届けられるものを音声にしているのではなく、人の個性を届けることで、人と人をつなげることを重視しています。SNSなどの力で個人がどんどん強くなっていく時代の中では、その人がそのタイミングで発信するからこそ価値があるコンテンツが、今後いっそう増えていくはず。だからこそ、配信を極端に簡単にする必要があったわけです。
なぜ大手メディアはVoicyに参入するのか?
――サービスのローンチから丸3年。現在の利用状況を教えてください。
現在、累計UUがおよそ320万、パーソナリティーは約300人で、そのうち20チャンネルほどが企業のアカウントとなっています。1日で3000時間聴かれているようなファンの多いパーソナリティーーもいますよ。
――パーソナリティーはどのように選ばれているのでしょうか?
基本的にはパーソナリティーを希望される方ご自身に応募いただき、独自の観点や意見を持っていることや既存のチャンネルとのバランスを見て、Voicyでの放送に向いていそうな方にお願いするようにしています。現在は非常に応募が多く、100人中2~3人がチャンネル開設に至るという具合です。端的に言うと「一緒にお酒を飲んで面白そうかどうか」。その人の話をまた聞きたいと思えるかどうかは大切だと思っています。
また、Voicyには現状、レコメンド機能が弱く、アプリ内のコンテンツを回遊する仕組みを強化中です。そのため、今は拡散力のある方を優先せざるをえない実情があります。これについてはこちら側のシステムの問題なので申し訳ないと思っています。将来的には面白いネタを持っているけど自ら手を挙げない人をリクルーティングできる体制を整えたいですね。