乗用車保有の考え崩す「完全自動運転」後の世界 土地利用や自動車保険のあり方も変えうる

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シェアリングやロボタクシーが普及すれば、自動車の稼働率が顕著に上昇すると考えられます。

現在、自家用車の稼働率は極めて低く、1日の大部分の時間は駐車場に置かれたまま、使用されていません。日本では自家用車の平均稼働率は、4.2%程度だといわれていますが、自家用車のロボタクシーへの転換が進めば、稼働率が大きく上昇します。かつ買い替え頻度が現在と変わらないのであれば、自動車の生産台数が減る計算となります。

もちろん、実際には頻繁に買い替えられるようになるため、販売台数や生産台数はそれほど減るわけではないでしょうが、自動車1台当たりの走行距離が延び、自動車の生産台数が激減する可能性は否定できません。

乗用車の保有台数や生産台数がどうなるかは、さまざまな要因に依存します。

これについては、いくつかの予測がなされています。

コンサルティングファームのPwCは、「自動車産業を転換する5つのトレンド」2018年5月)で、つぎのように予測しています。

ヨーロッパでは、車両保有台数は、現在の2億8000万台超から、2030年には2億台へと、25%減少する。アメリカでも22%減少する。頻繁に買い替えられるため、新車販売台数はヨーロッパでは34%増加する。アメリカでは20%増加する。

しかし、仮にロボタクシーの普及が進めば、保有台数は14%に減る。また、新車販売台数が50%に減少する可能性がある。 

自動車産業が大きく変わる

20世紀の先進国経済は、自動車産業を中心にして発展しました。それに伴って、鉄鋼業や石油産業などが成長したのです。

以上で見たような変化が生じれば、こうした構造が大きく変わることが予測されます。

自動車産業は、日本の最も重要な産業の1つですから、それがこのように変わることは、日本経済に大きな影響を与え、生産量が激減する可能性があるだけでなく、自動車産業の構造が変わることが考えられます。

自動運転車で重要なのはハードウェアでなくソフトウェアなので、自動車産業の主役がメーカーではなくなり、AIによる自動運転に関するものにシフトする可能性があります。

携帯電話では、2000年代に同様の変化が起こりました。スマートフォンへの移行が生じ、ハードウェアを作る携帯端末メーカーからOSを提供するソフトウェア企業へと主導権が移りました。この結果、アップルとグーグルが業界をリードする企業となったのです。

自動車の自動運転の分野では、グーグルの子会社であるウェイモが、実験車の走行キロなどで、圧倒的にリードしています。この状況を考えると、スマートフォンの場合と同様の変化が生じてもおかしくありません。

研究開発の重点が自動運転にシフトしていくと、日本から海外に出ていってしまうかもしれません。ロボタクシーの増加によって影響を受けるのは、メーカーだけではありません。個人の自家用車を相手にするガソリンスタンドや修理工場は、商売あがったりです。

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