フランス人が高くても外で「ランチ」をする理由 おいしいものを食べたいわけではなかった

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くみ: 働き始めてからも、やっぱり外食は高いなと思う。私は7ユーロくらいから食べられる社食があるから助かっているけど、同僚と食べたり、友人と食べたりすると、結構みんな普通のお店に行くことも多いよね。そうすると、最低でも15~20ユーロはかかる。ワンコインランチなんてところもある日本と比べたら、お昼代だけでかなり変わってくるよね。みんな毎日どうしてるのかな?

エマニュエル:大きめの企業だったり、行政機関なんかには、社食はたいていついているけど、社食のない企業だとレストランチケット(企業による食事補助)を利用できる。レストランチケットは社員がお金を払って企業から買うと、企業がその50~60%を払い戻しする仕組みになっている。

このチケットをレストランやパン屋さん、スーパーで食事を買うときにお金代わりとして利用できる。社食と違って食べる場所のバリエーションがあるというのが利点だね。原則としては1日19ユーロまでしか利用できないうえ、お釣りをもらえないので、社食を利用するより多少割高になる傾向があるけどね。

昼休みに会っているのは…

フランスの大都市では、昼食の時間はとても重要な意味を持っているんだ。友人や家族と会ういい機会というのももちろんあるけれど、何より自分の職場以外で働く知人などと情報交換をするビジネスライフのカギでもある。

例えば、いいポストの求人や、給料や職場の勤務状況などの情報を交換してお互いのキャリアアップに役立てるというふうにね。だから単なるお昼休憩というよりは、仕事のネットワークを作るための有効な時間と考えている人もいる。フランス人は食べることと話すことが大好きなんで、こういった昼食は利益と快適さのいいとこ取りと言えるね。

こういった理由から、外食は確かに費用が高くかかるけれども、その値段の中にはサービスや食事だけでなく、キャリアに関係する重要な出会いの場を提供する機会も含まれていると考えることができる。学生にとってのカフェのコーヒーと同じで、コーヒー1杯の価値としての値段ではなく、コーヒー1杯とともに過ごす時間が、支払う値段に反映されているとも言えるよね。

もちろん、キャリア形成に必死になっている人ばかりというわけではないから、そういう人たちは毎日社食を利用したり、家で用意した料理を職場で食べたりしているんじゃないかな。

佐々木 くみ 執筆家、イラストレーター

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ささき くみ / Kumi Sasaki

東京生まれの30代。フランス在住10年を超す。2017年10月に、エマニュエル・アルノーと共著で自らの体験をつづった『Tchikan(痴漢)』をフランスで出版。イラストも手掛けた。

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エマニュエル・アルノー 小説家

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Emmanuel Arnaud

1979年生まれ、パリ出身。2006年より児童文学、小説、エッセーをフランスにて出版。2017年にThierry Marchaisseより佐々木くみとの共著『Tchikan』を出版。2000年代に数年にわたり日本での滞在、および勤務経験を持つ。個人のサイトはこちら

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