「SIMフリーiPhone」をアップルが解禁した事情

「廉価版iPhone」が2020年に登場のウワサも

MM総研によると2019年上期のSIMフリースマートフォン出荷台数は137万4000台で2.3%増加している。台数はHuawei、ASUS、シャープ、アップル、OPPOの順で多く、これらの5ブランドによって出荷台数の80%が占められている。とくにHuawei、ASUSは、性能に対する価格の安さを武器に、家電量販店などを通じて販売が拡大してきた。

スマートフォン全体のシェアでiPhoneは44.6%を占めていることから、iPhoneの販売は依然として通信会社を通じて販売されてきたことがわかる。アップルはSIMロックフリーのiPhoneの販売強化を行い、依然iPhone大国である日本での地位を維持していきたいとの思惑が透ける。

しかしアップルがSIMフリーモデルの販拡に乗り出す事情はほかにもある。それは、通信会社によるサービスの継続利用を前提とした端末値引きについて、総務省が「今後2年で根絶する」と意欲を見せる電気通信事業法の改正にあった。通信サービスとひも付けた際の端末の値引き幅を2万円に制限し、通信サービスと端末値引きを分離して競争を促進させようとしている。

ここで問題となるのが、iPhoneのラインナップだ。

アップルは毎年、業界でもハイエンドに位置する製品を、およそ8万〜16万円の価格レンジで発売する。さまざまなプログラムを活用しても、ユーザーが値引きとして恩恵が得られるのが2万円に制限されれば、通信会社を通じた端末販売の価格競争力は大きく下がる。

今回の改正では、製造が中止された「在庫」モデルについては、2万円の制限を受けない特例が設けられている。しかしアップルは1年以上経過したiPhoneを毎年価格を下げながら、3年程度継続販売し、その間も製造を続ける。例えば2019年9月までは、2016年に発売したiPhone 7を製造・販売してきた。つまり販売が続く限り、iPhoneはこの「在庫モデル」の特例を受けられないことを意味する。

アップルがSIMフリーモデル解禁に踏み切る背景は、通信会社を通じたこれまでの販売手法で競争力を発揮できなくなっていく今後の状況の変化にあった。電気通信事業法に縛られない独自の販売網を拡充していくことによって、より自由な販売施策に打って出ることができ、またそれを可能にするブランドも十分に築けている。

アメリカ市場で成功しつつある施策を日本でも

2019年のアップルの決算は、1月発表の第1四半期に出された「利益警告」に象徴されるように、iPhoneの大きな不振によって売上高を減少させてきた。iPhoneの不振は2019年を通して復活しなかったが、ウェアラブルとサービス部門の成長によって、四半期決算は前年同期比でプラスに転じた。

その決算発表の中で、ティム・クックCEOはアメリカにおけるApple Storeを通じた販売施策が好転しているとコメントした。2019年に入ってから、アメリカで749ドルから販売されているiPhone XRをApple Storeで449ドルに割り引く販売施策で、iPhone販売台数の下落を食い止めてきた。

毎年iPhoneを乗り換えられる「iPhone Upgrade Program」を用意し、端末の下取りを前提に24回払いのうち12回を支払った段階で新モデルに乗り換えられる残価設定ローンを提供してきた。これに加え、2019年8月にサービスを開始した独自のクレジットカードApple Card利用者向けに、iPhone購入の際の24回払いを金利手数料なしで提供することを明らかにした。

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