補償措置法成立が地域再生に必須、八ッ場(やんば)ダムから始まる新政権の公共事業改革《特集・不動産/建設》

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 総事業費4600億円のうち、すでに7割が支出されたが、工事の進捗率は低い。

地元でダム計画に反対する「八ッ場あしたの会」の渡辺洋子事務局長は、「08年度末の事業進捗率は付け替え国道の6%、同県道の2%、同鉄道75%、代替地造成10%」と指摘する。さらに「代替地周辺では22カ所の地すべり地が判明しているが、コスト縮減のため2カ所しか補強工事をしない前提であり、追加対策の予算計上は必至」(渡辺氏)。

事業費自体、起債で調達されるため、「その利子を含めれば負担額は9000億円を超える」(渡辺氏)。

そこへとどめを刺したのが、民主党政権の誕生だ。衆院選のマニフェストで八ッ場ダムと川辺川ダム(熊本県)の建設中止を明記。選挙結果を受け、9月4日、国交省は八ッ場ダム本体工事の入札を延期した。

群馬県内の建設業者は「建設業は地域の労働者のセーフティネット。急激な変化で建設業が壊れると、地方が壊れる」(青柳剛・群馬県建設業協会長)と悲鳴を上げる。

9月23日、前原誠司・国土交通大臣は八ッ場ダム建設予定地や代替地を視察。午後には群馬県知事や地元町長と面会した。前原国交相は冒頭、「政策変更で住民の心労を煩わせ、迷惑をかけたことにお詫びしたい」と頭を下げた。

当日は住民との意見交換会も企図されたが、多くはダム推進派である住民側が拒否。前原国交相は、地元の理解が得られるまで、工事の中止手続きを進めない、としている。

9月26日、今度は川辺川ダムの建設予定地を訪れた前原国交相は、住民との意見交換会後の会見で、「今の公共工事はやめる前提に立っていない。その補償措置や裏付けの財政措置(法案)を次の通常国会に提出したい」と意欲を見せた。

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