補償措置法成立が地域再生に必須、八ッ場(やんば)ダムから始まる新政権の公共事業改革《特集・不動産/建設》

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 ただ、ダム中止を支持する住民も少数だがいる。豊田乳業の豊田武夫取締役は「工事用トンネルを開放すれば、高崎までの車のアクセスが改善する。水没地の河川指定を外せば、温泉街も再建できる」と訴える。現在は水没が前提の温泉旅館は、許可なしには建物の改装すらままならないからだ。

下流都県には、利水負担金の返還請求に言及する首長もいる。地元にとって最悪なのは、負担金返還の影響で生活再建事業も頓挫する事態。選挙前に民主党がまとめた「ダム事業の廃止等に伴う特定地域の振興に関する特措法案」(仮称)の骨子案では、ダム中止の影響を被る地域を「特定地域」に定め、国や自治体、地域住民から成る「地域振興協議会」が公共施設整備や産業振興策を発案し、国が交付金を出す。

まずは早期に法案を成立させ、ダム本体に頼らない生活再建の方策がありうるという選択肢を具体的に住民に与えたうえで、改めて地元再興のための施策を練るべきだ。場合によっては、カウンセリングなど心のケアも必要かもしれない。

ダム建設続行と中止のコスト試算にしても、下流に砂が流れないことによる海岸線の護岸工事など、トータルな費用比較は皆無に等しい。政府は国交省を通じこうした論点の一つひとつに明確な回答ができるだけの詳細な資料を開示する義務がある。それなしに地元関係者や、その他国民の説得はありえない。民主党政権の胆力が試されている。

(週刊東洋経済)

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