補償措置法成立が地域再生に必須、八ッ場(やんば)ダムから始まる新政権の公共事業改革《特集・不動産/建設》

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全国143ダムや道路も採算重視で計画見直し

民主党政権は、これを皮切りに全国143の国の直轄ダム事業を見直していく考えだ。ダム事業と直轄国道事業のうち、いくつかの案件で建設中止や計画見直しが争点になりそうだ。

直轄国道17事業とは、今年3月の段階で採算が合わないとして国交省がいったん計画中止を決めた18事業のうち、車線数の縮小などその後の見直しで採算が確保できたとして再開された17事業を指す。これらのすべてが再中止とはならないだろうが、引き続き事業の収支や必然性が厳しく問われるだろう。

八ッ場ダムや川辺川ダムは、こうした全国の大型公共事業見直しの入り口にすぎない。補償措置法案の成立後、各地で政府と住民の“話し合い”という名の衝突が繰り返されることになる。住民は、環境重視やムダな公共事業中止の政策と周辺の利便性の二者択一を迫られ、官庁工事に頼って自己変革を怠ってきた地方の建設業者の淘汰が加速する。

止まる公共事業の成功例にできるか

八ッ場ダム推進派の反発の裏には、世代を超えた57年間のトラウマがある。住民たちから見れば「結論ありき」で向かってくる民主党政権は、建設省の役人たちとダブって見えるのだろう。高齢化・過疎化で焦りもある。地元、群馬5区(小渕優子議員が当選)で衆院選に民主党が候補者を立てなかったことも「卑怯だ」と批判する。

前原国交相に「中止の旗を降ろして来てほしい」と直訴した高山欣也・長野原町長は「ダム湖があってこそ客が来る。ダムがなければ、山奥の秘境であるべき温泉街が道路の下になる。車は通り過ぎて隣の草津温泉へ行ってしまう」と危惧する。

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