日本企業が米国企業に絶対勝てない最大理由 トヨタを超えたい企業はサードドアを開け

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ところが、ここでは社長のようにステーキは食べさせてもらえません。連れて行ってもらえるのはラーメンかうどん。最終日にようやく焼き鳥屋という感じでね。だけど、そういうふうに影として一緒に歩くと、その会社の仕事や人間関係がよく見える。こうするとかなりの高確率で採用できるのです。

だから、トニー・シェイの話を読んで、やっぱりうまいなあと思いましたね。ただ、ザッポスの社員たちはそんなアレックスをうらやましがるものの、自分も社長の影になりたいと手を挙げる人はいない。そこが『サードドア』的な視点のある人とそうでない人の違いでもあります。

その夜遅くに、僕はトニーの元へ行き、別れを告げて、2日間のお礼を言った。「変な質問だと思うかもしれませんが」と僕は聞いた。
「どうして他の社員の人に影の役をやらせてあげないんですか?」
トニーはあっ気にとられたように僕を見てこう言った。
「喜んでやらせたいよ。でも誰も頼んでこないんだ」
(STEP3「インサイドマンを探せ」より)

現場を見るためアメリカに突撃取材

自ら手を挙げるのは大切なことです。僕は若い頃から、知らない場所へ行き、新しいことを体験するのは楽しいことだと考えていました。高卒で郵便局に入り、組合本部の専従になりましたが、1980年代に入ってすぐの頃、アメリカへ行って宅配業界の現場を見てみようと思い、英語はまったくできなかったけれど、渡米しました。

中沢孝夫(なかざわ たかお)/1944年生まれ。福井県立大学名誉教授。博士(経営学)。ものづくり論、中小企業論、人材育成論を専門とする。高校卒業後、郵便局勤務から全逓本部を経て、20年以上の社会人経験を経た後に45歳で立教大学法学部に入学を果たす。1993年同校卒業。1100社(そのうち100社は海外)の聞き取り調査を行っている。著書に『転職の前に―ーノンエリートのキャリアの活かし方』(ちくま新書)(撮影:尾形文繁)

当時は、フェデラル・エクスプレス(現フェデックス FedEx)やユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)があって、それをモデルにして日本にクロネコヤマトができたという流れがあった。これは実際の現場を見てみなければわからないことがありそうだと思ったんです。

当時のアメリカの宅配の機能は、「ハブアンドスポーク」という考え方で構築されていました。ニューヨーク、デトロイト、ダラスのような巨大ハブ空港があって、ある地方から別の地方に行くには、ハブ空港を経由してそこから目的地に向かう。地方と地方を結ぶ直行便がないから、地方間の移動には必ずハブ空港での乗り換えが必要というわけです。

それを応用したのが、FedExとUPSです。たとえ隣町に運ぶ荷物でも、まずは遠くの巨大拠点(ハブ)にすべての荷物を集め、そこで区分けをしてから各地域に配送する。これは実は、現在のGAFAが情報を集めるのと基本的には同じ仕組みなんですよ。

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