秋の夕暮れどき、のんびりゴルフ場のフェアウエイを歩くのはとっても気持ちがよいです。ここのところずっとカート導入のゴルフ場が増えました。歩いてプレーしていたころは、人も手押しカートもフェアウエー上の芝を踏んでいたので、芝がいい具合の硬さに仕上がっていました。ところが、人もカートも芝を踏む回数が断然少なくなったため、ふかふかのフェアウエーになりやすい。まるで練習場にあるマットの上からボールを打つようなもの。実はプロにとっては問題あり。きっちりインパクトを入れなくても失敗が失敗として表れにくいので技術向上には不向きです。それに慣れてしまうと、ボールが浮かない洋芝のフェアウエーから打つときには、はっきり技術の違いとなって出てしまいます。
さて、今回はクラブの溝の話。R&A(全英ゴルフ協会)では、2010年からロフトが25度以上のクラブの溝について、その規則が変更されます。日本の男女プロ両ツアーでも施行予定です。変更点は今までより溝の容積率が小さくなり、溝の形状が変わること。ラフから打ったとき、グリーン上での止まり具合が全然違うらしいのです。たとえば角溝は最もスピンがかかりやすく、フェアウエーから打ったときと同様にラフからでもスピンがかかりやすいのですが、V溝になるとラフからは止まりづらいとのこと。R&Aでは、溝の研究のために2年かけてさまざまなクラブで世界中の芝で試打を行ったそうです。その中には全英オープンの優勝者パドレイグ・ハリントン選手の協力もあったそうです。先頃、欧州女子ツアーで選手の現在使用しているクラブの適合テストを行ったら、30%しかクリアしなかったとのこと。ほとんどの選手はこれから適合クラブに変えなくてはいけない状況です。男子より非力な女性はそれでなくてもスピンがかかりにくい。選手側からは男女同一の条件とすることに異論もあるようです。
R&Aによると、新しい溝でラフから打った場合、弾道が高くなり、スピンが効かなくなる分、ボールが以前より飛ぶとも話していました。こうなると、試合でのコースの攻め方が変わってきます。以前より、ランが多くなる分、ボールを落とすポイントが手前になります。スコットランドのようにフラットな形状が多いゴルフ場はまだよいですが、日本のように砲台グリーンが多い場合、グリーン上にボールを止めるのはより難しくなるかもしれません。また、ショットの精度がより求められるので、スイングの質の向上が外せません。プロゴルフ協会も今までと同じコースセッティングをしていたら、場合によるとプロの平均ストローク数が増えてしまうかもしれない。トーナメントの興行性にも関係してきます。溝一つの変更でも考慮すべき点は多いようです。一般ゴルファーには2024年から施行予定なので、まだまだ先の話です。
1963年福島県生まれ。89年にプロ初優勝と年間6勝を挙げ、90年から米ツアーに参戦、4勝を挙げる。欧州ツアー1勝を含め通算15勝。現在、日本女子プロゴルフ協会(LPGA)理事。TV解説やコースセッティングなど、幅広く活躍中。所属/日立グループ。
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