ユニゾHD、米ブラックストーンがTOBを実施へ のらり回答かわすユニゾにしびれ切らし決断

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これだけの短期間に、同じ企業が3度もTOBの提案を受けるのは、極めて異例の事態。だが、「ブラックストーンのTOBが成立し、ゴタゴタは終わりを迎える」との見方がもっぱらだ。

M&A先進国のアメリカには、高い買収価格を提示した買い手に会社を売るのを義務付ける「レブロン基準」があり、世界のM&A業界の“常識”となっている。ユニゾ側が「日本の法律ではない」と主張してブラックストーンによるTOBに反対しても、説得力に乏しい。

嫌がっているのは「ユニゾ経営陣だけ」

しかも、ブラックストーンによるTOBを嫌がっているのは「ユニゾ経営陣だけ」(別のファンド関係者)。HISによるTOB時には1700円程度だった株価は、今や5000円近くまで上昇している。これまで複数回に渡る第三者割り当て増資などで、低迷する株価に塩漬け保有を強いられいた個人株主からしてみれば願ったり叶ったり。HISもTOB不成立後、株を売って29億円の特別利益を上げている。

一連のTOBの前は、ユニゾHDの株価は安値で放置されていた(写真は銀座のホテルユニゾ、撮影:梅谷秀司)

また、途中で株を買い増したエリオットや、英バークレイズ・キャピタル・セキュリティーズ、そしていちごアセットマネジメント・インターナショナルなども、高値で売り抜けることができる。「ブラックストーンのTOBに反対する人は誰もいない」(同)のが現状だ。

TOBは、日本語で「敵対的買収」と呼ばれることが多い。これは、買収される会社側が「反対」の意思を表示し、敵対的な関係になることがほとんどのためだ。しかし、ユニゾ以外のステークホルダーが皆喜んでいる今回のTOBを、果たして「敵対的」と言っていいのか。ユニゾの取締役会の下す判断を、市場関係者は見守っている。

田島 靖久 東洋経済 記者

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たじま やすひさ / Yasuhisa Tajima

週刊東洋経済副編集長。大学卒業後、放送局に入社。記者として事件取材を担当後、出版社に入社。経済誌で流通、商社、銀行、不動産などを担当する傍ら特集制作に携わる。2020年11月に東洋経済新報社に入社、週刊東洋経済副編集長、報道部長を経て23年4月から現職。

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