「群馬県」が映画撮影ロケ地に選ばれやすい背景 映画「影踏み」は地元協力得てオール県内撮影

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「やはり東京は人口が多いんで、撮影に窮屈さを感じてしまいます。昔だったら、設定を無理やり変えてでも地方で撮影したいとは思わなかったですが、今はそういうことはまったくないですね。地元の人も温かいし、手伝ってくれる。そしてロケ場所の許可もおりやすい。

ロケでお邪魔しているおうちの方が、おみそ汁を作ってくれるなんてことは東京じゃありえないですからね。そういった人の温かみを求めて、地方ロケのネタには積極的に関わっていきたいという思いはあります。多くのプロデューサーはそう感じているんじゃないですかね」。

そしてその言葉通り、本作も地元の協力体制に助けられたという。

「群馬県民の方々の協力無しでは絶対に出来なかった」と語る松岡周作プロデューサー (筆者撮影)

「例えば、本作には普段ならハードルが高い火事のシーンがあるんですけど、地元の消防団が協力してくれた。リアルな形で撮影をバックアップしてくれる体制を整えてくれた。今回はそういったことが本当に多くて。群馬県民の方々の協力無しでは絶対に出来なかった。もしよそで撮影をすることにしたら、予算はきっと今の1.5倍はかかっていたでしょうね」(松岡プロデューサー)。

実際、群馬県は撮影地として、多くの映画作品に登場する。是枝裕和監督のカンヌ国際映画祭審査委員賞を受賞した『そして父になる』は、前橋市が撮影地だった。横山秀夫氏の原作で、瀬々敬久監督の映画『64-ロクヨン-』も前橋市や高崎市がロケ地になっていた。

他県での撮影なら予算は1.5倍はかかった

さらに、最近は、舞台となった地で「先行公開」するケースが増えているが、『影踏み』も11月15日の全国公開に先駆け、11月8日から群馬県で先行公開している。

8日には「伊参スタジオ映画祭」でも上映されたほか、11月9日には「前橋シネマハウス」「ユナイテッド・シネマ前橋」「イオンシネマ高崎」「109シネマズ高崎」「MOVIX伊勢崎」「イオンシネマ太田」の6館を、山崎まさよし、篠原哲雄監督、横山秀夫らが訪れ舞台あいさつを実施。全回、満席となる大盛況で、地元群馬を舞台に、幸先のいいスタートを切った。

篠原監督は、『月とキャベツ』を「今でも多くのファンに支えられている幸せな作品」と語る。その成功例をもとに、さらなる地元・群馬との絆を強化させた『影踏み』。その関係性は興味深いモデルケースとして注目される。

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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