丸太小屋で育った「Slack」創業者が貫く信念 CEOが語る経営、ものづくり、生い立ち(後編)
――今年6月に上場しました。しかも新株を発行しない直接上場。なぜこのタイミングだったのでしょうか。
具体的な時間軸を考えていたわけではない。ただ上場企業であることのメリットは大きい。顧客の層は大企業や政府機関にも広がってきた。どちらの場合でも、僕たちが健全な会社かどうかを確かめるために、決算書を見たがる。だから「信頼性のスタンプ」として役に立つ。
あとは投資家に流動性を提供したかったということもある。本当に、特定のタイミングを見定めていたわけではなく、「よし、ここで行こう」という感じで決めた。
直接上場にしたのは資金調達の必要がなかったから。株主の持分を何%も希薄化するのは避けたかった。(音楽ストリーミングサービスを手がける)スウェーデンのスポティファイが先例を作ったが、彼らとは長時間話をした。
孫正義氏は「決断力がある」
――大株主にはソフトバンク・ビジョン・ファンドも名を連ねています。
孫正義氏とは何度か話をした。彼は非常に決断力がある。投資をしたいかどうかを決めるのに、長々とした交渉は必要なかった。彼は「成長性」にしか興味がなかった。ソフトバンクは通信会社であり、投資会社でもあるが、法人向けソフトウェア販売の大手企業でもある。だからスラックがどう成長してきたかをきちんと見ていたんだと思う。企業、そしてプロダクトとしてのビジョンや、成長の展望を話すだけでよかった。
――一方で上場以降、株価は下落傾向にあります。
株価に関しては、アトラシアンというアメリカのソフトウェア企業が教えてくれた教訓がある。僕たちは彼らの事業の一部を昨年買収している。
昨年その発表をしたとき、僕は彼らに「やあ、株価はいい感じだね。おめでとう」とメールを出したら、「別に株価が上がったからといって喜ぶわけじゃない。株価が下がったからといって悲しくなりたくもない」と返ってきた。スラックが上場する1年前だったが、非常に興味深い見方だと思った。
株価はさまざまな要因で上下する。株を買うときにその理由を聞くアンケートがあるわけでもない。たいていはソフトウェア業界全体の印象で決まる。株価をコントロールすることはできない。上場前に最後の資金調達をしたとき、評価額が高すぎて、僕たちは随分遠くまで来てしまったと心配になった。だから株価は長期視点で見ていく。今のフォーカスは、顧客であり、従業員であり、プロダクトだ。
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