丸太小屋で育った「Slack」創業者が貫く信念 CEOが語る経営、ものづくり、生い立ち(後編)
――もともとご両親はヒッピーで、小さい頃は丸太小屋で育てられたと聞きました。一方でコンピューターにも早くから興味を持っていたそうですね。こうした経験は、今のビジネスにどういう影響を与えていますか。
小さな町で育ったことで、インターネットがもたらす変化の大きさをかみしめることができたと思う。東京やニューヨーク、ロンドンに住んでいれば、すぐそこに大きな世界がある。ただ人里離れたところでは、インターネットに大きな力があることがより明白になる。
5歳くらいまで丸太小屋で育った。ヒッピーの両親はその後ビジネスの世界に入っていったが、ずっと同じ信条を持っていた。それは、「世界にポジティブなインパクトをもたらす」ということ。
これはスラックでも同じだ。確かにニューヨーク証券取引所にも上場して、資本主義のど真ん中にある。ただ、会社で働いてくれる人や、社外で一緒に協業してくれるパートナーや顧客に対して、深い尊敬の念を忘れずに経営している。
独りよがりはダメ、ユーザーのことを考える
――これまで複数のスタートアップを起業し、さまざまなプロダクトを世に出してきました。ユーザーに届けるうえで、プロダクト開発に関してどういう信条を持っていますか。
これは日本でも同じかはわからないが、レストランのウェブサイトでよく起こることを話そう。多くの場合は、住所やメニュー、営業時間、あるいは電話番号を知りたいからアクセスする。たいていのウェブサイトは、自動で音楽が流れ始め、食べ物の写真をズームしたり引いたりする。知りたい情報はそのアニメーションが終わってからようやく見られる。
本当は誰しももっとシンプルなものが欲しいはずだ。ではなぜそれが作られたのかって? そうすればお客さんを惹きつけられるというオーナーの思い込みだろう。彼らだって、自分が行きたいレストランを調べるときは目的の情報を早く知りたいはずだ。
多くの人はプロダクト自体はどうでもいいと思っている。経済的な状況だったり、恋愛だったり、ほかに考えることはいくらでもある。だから本当に何が必要かについて、謙虚になって考えなければならない。それを教えてくれたのが、アメリカのデザイナーであるチャールズ・イームズだ。
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