壇蜜を射止めた漫画家「清野とおる」の快活人生 大学生でデビュー、どん底乗り越えて見た境地

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昔の原稿をそのまま単行本にも載せてもよかったのだが、やはり目に余る所は直そうと思った。そうしていったん手をつけ始めると、止まらなくなった。

『短編集』(上)に描かれている、漫画家人生で最もつらい時期に担当編集と打ち合わせた喫茶店。今回、同じ店でレアチーズケーキを食べてもらった(筆者撮影)

「セリフや絵はもちろん、ストーリーやオチまで変えちゃったところも結構あります。

若い頃、赤羽のアパートにこもって一生懸命描いた漫画を、今の自分がブラッシュアップさせてあげた感じですね。若き自分と今の自分がコラボしているような不思議な感覚でした。描きながら、当時のことを思い出しました。

こんな、世間の価値観から逸脱しまくったシュールな漫画を、絶対売れると信じて一生懸命描いていた若い自分をいとおしく感じました。今回出した2冊は

『はい、これで漫画家おしまい』

って言われても納得できるな、という作品になっています。

ここ10年でいちばん所得の低い年になりましたけど、ある意味漫画家としての原点に立ち帰れたような気がします。

原稿料の出ない作業を自ら進んでずっとしてましたから、今仕事をすると、

『漫画って描くとお金もらえるんだ!! すごい!!』

って、新鮮な気持ちが押し寄せてきます」

今後はどのような漫画を描くのか?

ちょうど40歳になる直前に、今までやってきた仕事に整理がついた形になった。

清野さんはこれからどのような漫画を描こうと思っているのだろうか?

『まあどうせいつか死ぬし ~清野とおる不条理ギャグ短編集~』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

「すでに新作のテーマは決まっています。内容はまだ言えませんが、初期の『東京都北区赤羽』のようにページ数に自由が利くウェブ媒体で連載できればと思っています。

最近は、気力にも体力にも限りがあるんだな、と強く感じています。だから本当に描きたいと思うことに絞って描いていくつもりです。正直、やりたくないことをやってるヒマはないですね」

なかなか認められずつらい思いをした創作漫画時代があったからこそ、『東京都北区赤羽』をはじめとする実録漫画が奥深い味わいの作品になったのだと思う。

そうして人気漫画家になった清野さんが、次にどのような漫画を描くのか? 心待ちにしたい。

村田 らむ ライター、漫画家、カメラマン、イラストレーター

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むらた らむ / Ramu Murata

1972年生まれ。キャリアは20年超。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教組織、富士の樹海などへの潜入取材を得意としている。著書に『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)、『ホームレス大図鑑』(竹書房)など。

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