「多様な入試」で合否を決める私立中のホンネ 入学後に「伸びしろ」ある生徒に門戸開く

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「インタラクティブトライアル」は進行役のネイティブ講師のもと、6人程度のグループごとにオールイングリッシュで実施。カードゲームや即興でオリジナルストーリーを作るアクティビティーなどを行ったあと、受験生同士でフリートークをするなどし、その様子が観察評価される。「インタラクティブ」に対話や相互作用といった意味があるように、英語力の高さではなく、積極性や他者とのコミュニケーション、プレゼンテーション能力などを見る。

共立女子中学校のインタラクティブ入試はグループで行い、英語を使ったコミュニケーション能力や積極性などを多角的に評価する(写真:同校提供)

受験目安は英検3級以上としているが筆記試験はないため、リスニングとスピーキングの力があれば十分に対応できるという。また、別途行われる算数の試験は計算問題や一行題が中心で、受験勉強のスタートが遅くても間に合う内容だ。

そのため通塾していないが英会話は習っている、もしくは、帰国時期などで海外帰国生入試の受験要件には満たないが英語学習を続けていた、という受験生も多い。

入学後の“伸びしろ”は大きい

これらの試験を実施するのに、学校側としては手間暇がかかるのは事実。実際、2019年の入試では合科型入試の受験生が大幅に増加し、すべての面接が終了するまでかなり時間がかかった。

しかし4科型入試で合格が難しい受験生でも、他者との関わりや自分の意見を論理的に表現する能力に長けていれば「入学後の“伸びしろ”は大きい」と金井先生は考えている。また多様な生徒が集まることで、授業内のディベートやグループワークが活性化する狙いもある。そのために特殊な入試も盛り込みながら門戸を広げ、4科型入試で入学した生徒にも刺激を与える存在になることを期待している。

合科型入試は前年度、倍率が6倍にも膨れ上がったが、多くは他校との併願や、同校への入学を強く希望する受験生が4科型入試に引き続いて受けたパターンで、合科型入試に絞って受けるケースはまれだった。

実際、保護者や塾の関係者からは特殊な形式での選考に不安の声も聞かれるが、「いま小学校で受けている教育が随分と変わってきていて、グループワークや発表の機会が増えています。そのため意外とお子さんは抵抗感なく受験できているようで、発表も堂々としていました」(金井先生)。

このような入試が増えてきているとはいえ、難関校では従来の4科型が多く、過酷な受験勉強を勝ち抜いていかなければいけない風潮は強い。しかしグローバル化や人工知能(AI)による技術革新などにより、今の子どもたちが社会に出るころには現代はまったく違う社会になっている可能性がある。年々、広がりを見せている多様な中学入試が10年、20年先には当たり前になっているかもしれない。

吉岡 名保恵 ライター/エディター

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よしおか なおえ / Naoe Yoshioka

1975年和歌山県生まれ。同志社大学を卒業後、地方紙記者を経て現在はフリーのライター/エディターとして活動。2023年から東洋経済オンライン編集部に所属。大学時代にグライダー(滑空機)を始め、(公社)日本滑空協会の機関誌で編集長も務めている。

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