「多様な入試」で合否を決める私立中のホンネ 入学後に「伸びしろ」ある生徒に門戸開く
昨年度、出されたテーマは「熱中症」、「おしゃれ障害」、「身の回りのマークや記号」、「2020年に向けて」、「外国人にお勧めの日本の観光地」などバラエティー豊か。試験会場を「ラーニングコモンズ」と呼ばれる自習室にしている点からも入試らしくない雰囲気が漂う。受験生が緊張しないよう昨年度は試験中、クラシック音楽も流した。
もちろん入試なので「自分の言葉で論理的に話すことができたか」「根拠となることが客観的な事実に基づいているか」「幅広い視野を持って物事を見ているか」という評価基準に基づいて選考は行われる。
しかし特別な受験勉強をせずとも日々、さまざまな話題に関心を持ち、小学校での学習に取り組んでいれば十分に対応できる入試とも言える。
実際、これまでの入試では受験生自体が楽しみ、意欲的に挑戦する様子が見られているという。過去には試験官が驚くほど個性ある発表を披露する受験生がいたり、すでに合格をもらっている受験生でも自らの希望でプレゼン型に挑戦したりする例もあった。導入して3年になるが、プレゼン型で入学した生徒はその後の成績の伸びがよく、潜在能力の高さを感じている、と柳澤校長は話す。
受験のために好きなことをやめてほしくない
また来年度から新しく導入される「2科選択型」は「国・算・理・社」の問題用紙をすべて見てから、受験する2科目を選べるという試験。
「理科や社会が得意だというお子さんから入試の相談を受けることがあり、得意な科目で力を発揮してもらおうと考えた試験です。問題を見て苦手な分野の出題が多いなら、国語や算数でも受けられるよう柔軟性を持たせました。理科や社会に高い興味、関心を持っているなら、入学後もその個性や強みをさらに伸ばしてもらいたい」(柳澤校長)
このような多様な入試を用意している背景には、柳澤校長自身の強い思いがある。
「受験勉強のためにずっと続けてきた習い事を辞めた、といったお子さんの話を聞くととても残念に思います。これからは何もかもなげうって受験勉強に集中しなければいけない、という時代ではなくなるでしょう。好きなことを通じて身に付く“やり抜く力”、“乗り越える力”があれば、学力は入学してから十分に伸びます。だからこそ各自が得意なことで挑戦できる入試を用意し、入学後に多様な生徒が集まることで新しいウェーブを作ってもらいたいのです」
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