JR西「終電繰り上げ」は日本の働き方を変えるか 鉄道の「現場の改革」は一筋縄ではいかない

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通常の企業は1日8時間・1週間40時間の労働時間が通常である(労働基準法第32条)。しかし列車の運行は日中8時間で完結させるということはほぼ不可能である。2002年限りで廃止された有田鉄道(和歌山県)の末期は、一部土曜日や日曜日等の列車の運転が休止され、平日3時間弱の間にわずかに2往復という状況になった。

しかし、そのような例は稀で、鉄道事業においては運転間隔の長短はあっても早朝から深夜まで8時間を超えて途切れずに列車が運行されるのがほとんどである。その間運転要員の配置は必要不可欠である。

また、当初予定されていた運転士等が急な事情により乗務不能になった場合に備えて、予備の人員を確保しておかなければ列車の運転を維持できないケースもある。

運輸交通業の特殊性

このような事業に対応するために変則的な労働時間が定められることになる。特徴的なものを1つ挙げると、運輸交通業の予備勤務者については、1カ月以内の一定の期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間を超えない限度で、あらかじめ就業規則などで特定することなく1カ月単位の変形労働時間制(当該の1週で40時間超、1日8時間超)をとることができるとされている(労働基準法第40条・同法別表1四、労働基準法施行規則第26条)。

余談だが、規則第26条では「列車、気動車又は電車に乗務する労働者」と規定されている。列車、気動車または電車などと区分する理由も突き詰めてみたい。

また、労働者には原則として労働争議をする権利が認められているが、鉄道のような公益事業に携わる者が労働争議を起こすときには、10日前までに労働委員会と厚生労働大臣または都道府県知事に争議予告をすることが必要とされている(労働関係調整法第8条第1項第1号、第37条第1項)。列車の安定的な運行はそれだけ社会にとって重要視されているということである。

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