JR西「終電繰り上げ」は日本の働き方を変えるか 鉄道の「現場の改革」は一筋縄ではいかない

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JR西日本は、すでに「労働力不足に対するメンテナンスの取り組み」として、2019年5月、比較的輸送量の小さい山陰本線の一部で昼間の列車を3日間運休させた線路の保守点検を実施している。

しかし都市部では日中の列車を運休させるわけにはいかず列車が走らない夜間などを中心に保守点検を行わざるをえない。終電が過ぎたのを確認してから作業に入り、始発が走り出す前に線路からは離れなければならないことを考えると、作業時間は3時間程度しかないこともあろう。

そこで使う作業用車両や道具の後片付けなども考えれば相当に時間的制約が厳しいことは想像にかたくない。それが保守点検要員の労働日数の軽減を妨げ休日をとりにくくしていること、それにより敬遠されているということも容易に想像できることではある。

終電繰り上げは合理的か

「働き方改革」の動きは「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が2018年に成立するなどして急速に広がってきた。労働者の過労によるさまざまな影響の防止の動きや「ワークライフバランス」などという言葉とともに世間に広く浸透している。

疲れ切っていては労働者が十分な能力を発揮することができないし、さまざまな病気の原因にもなる。そうなれば個人だけでなく社会的な損失にもつながる。

深夜や炎天下の保線作業はただでさえ過酷であり、労働条件が少しでも改善されることは労働者にとっては朗報であるし、望ましいことである。しかし、その実現の手段として終電の繰り上げを行うことが合理的といえるだろうか。

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