大都市圏の満員通勤電車、東京圏の通勤事情緩和へ国は新たな制度設計を

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 80年代に特定都市整備事業が制定され、これに基づいて東武伊勢崎線の複々線化が完成、小田急線の複々線化工事も進んでいる。ただ、この事業も、利用者から前倒しで運賃を割り増しで受け取り、設備投資の原資に充てるもので、国から補助金や減税の支援があるわけではない。

05年には都市鉄道利便増進法が施行された。この法律は相互乗り入れや駅の統合など、ネットワーク性向上を目標に、国が財政・税制の支援を与えるもの。複々線化など輸送力強化を目標にしたものではない。

民主党に政権が交代したことで八ッ場ダムや空港整備特別会計を利用した不採算な地方空港などの見直しがクローズアップされている。

「道路、空港、治山治水」に比べると、都市鉄道の輸送力増強のための国費投入はゼロに等しかった。

この理由は、公営地下鉄を除き、鉄道会社はJRも含めすべて株式会社で、営利企業であるからだ。

「そこに国費を投じることは難しい」(国土交通省)。

したがって、鉄道の輸送能力向上のための投資は、鉄道経営者の熱意と乗客に対するサービス精神の多寡に依存してきた。

現在、JR東日本を含めて多くの鉄道会社は、複々線化を中心にした輸送能力向上投資には消極的だ。

その理由は、投資に見合った需要増が見込めないこと、将来、少子高齢化で乗客減が予想されること、沿線住民の反対運動で、工事を円滑に進めることが難しいことなどだ。

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