大都市圏の満員通勤電車、東京圏の通勤事情緩和へ国は新たな制度設計を
国は運輸政策審議会第18号答申(2000年)で、混雑率を基準にして、東京圏の主要31区間について、長期目標として混雑率150%以下という目標を掲げている。個別路線についても180%以下という数字を掲げている。関西圏ではすでに150%以下という目標を達成している(07年度国土交通省統計)。
混雑率とはラッシュ時の最混雑区間の1時間当たりの通過人員を輸送力で割った数字である。
だが、東京圏ではいち早く複々線化を完成した東武伊勢崎線(混雑率145%)などを除くと、中央線快速(同198%)、東急田園都市線(同198%)、小田急線(同192%)など多くの路線が目標を達成していない。ちなみに明治時代の行政官が想定した「乗客全員が座れる」状態の混雑率は40%程度になるだろう。
また京王線は混雑率169%と180%以下を達成しているが、この数字はピーク時の1時間に30本という輸送力ギリギリの列車を走らせることで達成したもので、ピーク時の表定速度の大幅な低下を招いている。
混雑率の緩和と表定速度の向上を同時に達成し、通勤者の利便性、快適性を向上させるには、複々線化などの抜本的な投資が必要だ。
輸送力増強へ制度設計を
東京圏の都市鉄道がなぜピーク時に混雑と表定速度の低下を招いているのか。その最大の理由は、森谷英樹著『私鉄運賃の研究』(日本経済評論社)で指摘されているように、設備投資が最も必要だった60~70年代、国が「物価抑制」を名目に運賃値上げを抑制し、民鉄に設備投資の原資を与えなかったためである。