大都市圏の満員通勤電車、東京圏の通勤事情緩和へ国は新たな制度設計を
「暮らしのための政治」を掲げる民主党のマニフェスト。子ども手当、農家の戸別所得補償、高速道路の無料化など政策が並ぶ。だが、欠けている政策がある。東京圏の都市鉄道の輸送能力増強投資を国が支援して、通勤・通学事情を緩和する政策である。
東京圏(中心からおおむね半径40キロメートル)の人口集積は3533万人と世界最大である。3位のニューヨーク都市圏の人口1873万人の約2倍である(国連2007年調査)。
東京圏の人口集積を支えているのが都市鉄道だ。東京圏の通勤・通学は都市鉄道が担っている。2000年の国勢調査によれば、東京圏では通勤・通学者の約50%が交通手段として鉄道・バスを利用している。
同じ大都市圏でありながら、大阪圏では約38%、名古屋圏では約19%に低下する。東京圏の通勤・通学で重要な役割を果たす都市鉄道だが、ラッシュ時の混雑、表定速度の低下、遅延は利用者を悩ませている。ちなみに表定速度とは列車の停車時間を含めた時速であり、路線の利便性の目安になる数字である
満員電車は“違法”?
鉄道輸送の基本を定めているのが明治時代に制定された鉄道営業法(1900年)である。驚くべきことに、鉄道営業法第15条第2項は、「乗車券ヲ有スル者ハ列車中座席の存在スル場合ニ限リ乗車スルコトヲ得」と規定している。この条項を素直に読めば、明治時代の行政官は、「鉄道会社は座席以上の旅客を乗せてはいけない」と考えていたと解釈できるだろう。現在の混雑状態は明らかに“違法”ではないか。
この質問に国土交通省鉄道局の担当者は、「鉄道営業法第15条の規定は強行法規ではない。乗車券を持っている人は列車に乗る権利を持っているということで、任意で立ち席でも乗車したいということであれば、その権利があると解釈している」と違法ではないことを強調する。