「地方の古い戸建て」買い取る企業の儲けの秘訣 カチタスの登場で深刻化する空き家は減るか

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カチタスによると、地方の総世帯数は日本全国の約46%(約2419万世帯)。そのうち、年収200万~500万円の世帯は、地方の総世帯の約37%(約902万世帯)で、さらに借家に住んでいる割合は約37%(約333万世帯)。借家のままでいいという人もいるが、持ち家志向が4割程度あるので、約138万世帯は、地方で手頃な価格の戸建てがあれば購入する「潜在顧客層」になるという。

潜在顧客を顕在化させるには、住宅の改修も重要だが、「買える価格に設定」して販売することも重要だ。カチタスでは、つねに販売価格を意識しているという。

三者立ち会いを実施

買い取るかどうかの基準は、改修費用を上乗せしても「住宅市場で売れる販売価格に収まる」かどうか。となると、改修範囲や費用をどれだけ正確に予測し、買い取り価格を決めるかが、鍵になる。同社は競売物件だった古い戸建ての改修を多く扱うことで、目利きのスキルを上げてきたが、これだけに頼っているわけではない。

買い取り再販業者の多くは、買い取り物件の目利きを自社の担当者に任せている。これに対して、カチタスでは「三者立会い」を実施している。

三者とは、不動産会社である同社の担当者に加え、改修工事を行う施工会社、シロアリの防蟻工事を行う防蟻会社の3社だ。不動産会社は物件情報を整理し、法的な手続きを行うサポートをするが、建築の専門家ではない。実際に改修工事を行う施工会社と防蟻会社が床下や屋根裏まで入念に確認し、目利きを行うことで精度が上がるのだという。

「雨漏りリスクのない古い戸建てはない」と言っていいほどだというが、雨漏りがあっても原因が特定できて改修の見通しが立つ場合は、改修費用を予測でき、売り出し後のトラブルを避けることができる。原因が特定できない場合は、売り出し後に雨漏りが生じる可能性が高いので、買い取り対象外と判断される。

実はここまでしても、実際に買い取った家の改修範囲が想定よりも広がってしまう事例もあるという。そうした事例を検討して、つねに「チェックリスト」を改善して、目利きのスキルを高めることを繰り返して、レベルアップに努めているのだ。

また、住宅市場で手頃な価格に設定するには、「家賃並みの住宅ローンで買える」ことを意識しているという。同社の平均販売価格は1430万円なので、改修費用を安く抑える工夫をしないと事業化が難しい。

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