我慢弱い子ほど「高収入・高学歴」に縁遠い理由 「マシュマロ実験」が明らかにした衝撃事実

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アメリカには、「我慢強い子」ほど成功者に近づきやすいという実験データがあるそうです。大人になってからでも伸ばすことができる、目先の利益に惑わされないコツをご紹介します(写真:Fast&Slow/PIXTA)
アメリカには、「我慢強い子」ほど成功者に近づきやすいという実験データがあります。それを明らかにした「マシュマロ実験」の内容や、自制心が人生に与える影響、大人になってからも自制心を高める方法を、脳科学者の中野信子さんが解説します。

情動にブレーキをかける力がある人ほど人生で成功する。そんな数字では表しにくそうな漠然とした定理を証明してしまったのが、心理学や脳科学の世界ではとても有名な「マシュマロ実験」です。

これが最初に行われたのは1970年のことでした。場所はアメリカのスタンフォード大学。対象となったのは、4歳の子どもたち186人でした。

まず子どもが1人ひとり部屋に呼ばれます。机にはマシュマロが1つ、皿の上に置かれています。そして実験者は子どもにこう伝えます。

「わたしは今から用事があってこの部屋を出なくちゃいけない。でも、15分後に帰ってくるよ。そこでもし君がマシュマロを食べずに残しておくことができたら、そのときはもう1個マシュマロをあげよう。でも、もし君が食べてしまったら、もうマシュマロはあげられないよ」

こうして実験員が部屋を出ていった後も、部屋の様子は監視カメラで観察され続けました。すると子どもたちは、マシュマロを触ったり、匂いを嗅いだり、はたまた自分の目を手で覆ったり、後ろを向いてしまったりと、さまざまな反応を示しました。ただ、大半の子どもはマシュマロをすぐに食べることはせず、少なからず我慢しようという努力は見せました。はたして15分後の結果は……。

我慢した子ほど成績優秀者に

全体の約3分の2の子どもは我慢できずにマシュマロを食べてしまいましたが、残りの約3分の1の子どもはなんとか15分間我慢して、2個目のマシュマロを手に入れることができました。我慢できた子どもの多くは、前述のようにマシュマロができるだけ目に入らないように工夫をしていた子たちでした。

さらに、この実験には続きがあります。18年後、その子どもたちが22歳になったときに追跡調査をしてみました。するとマシュマロを食べてしまったグループより、食べなかったグループのほうが成績優秀者が多いという、統計的に有意な結果が出たのです。

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