世界の王室から読む「女系・女性天皇」の可能性 皇位継承問題を考えるうえで知っておきたい
男系継承を維持すべきと考える人々(男系派)は、歴史的な男系の皇統を維持するのに、世論調査を考慮する必要などあるのかという疑問を呈しています。
国民世論や政治が皇統の継承の伝統を変えることなどできないという主張もありますが、必ずしも、そうではないのです。
戦前までの典憲体制(皇室典範と憲法が同等に置かれた法体系)と異なり、現在、皇室典範が憲法の下位に事実上あると解されます。国民に選ばれた国会議員が皇室典範を改正することもできます。その意味において、「国民主権」に委ねられている範疇に、皇位継承問題もあると法理的に解することもできます。
主権者たる国民の意志をまったく無視することは難しいでしょう。政府も「慎重に冷静に、国民の賛同が得られるように議論を重ねる必要がある」というスタンスを維持しています。
世論戦では、男系派は女系派に勝てないので、もはや政治判断で、政権が旧宮家復帰のための法整備を整えるなど、粛々とやるべきことをやるべしとする意見もあります。たとえ世論に反することであっても、政治判断で行動することは代議制において認められる民主主義の一つの形態であるとされます。しかし、世論に反することを行えば、激しい反発を食らうことが避けられないので、これまで、誰もやりたがらなかったのです。
安倍首相は10月8日、参議院本会議で、「男系継承が古来例外なく維持されてきたことの重みを踏まえ、慎重かつ丁寧に検討を行う必要がある」と述べています。
世論が継承問題を主導した
世論や政治が継承問題に及ぼした影響や結果を世界王室の事例から読み解いていけば、今後、日本で、どのようなことが起こるかが見えてきます。
直近の例として、イギリスを見てみましょう。2013年、王位継承法制定で、男女の区別のない長子継承へと移行しました。それまで、イギリスでは、女王も女系王も認められていましたが、男子がいる場合は、男子が優先的に王位を継承することになっていました。その条件が2013年以降、廃止されたのです。
2010年、ウィリアム王子とキャサリン妃が婚約したとき、世論調査が実施されます。YouGov(ユーガブ)とサンデー・タイムズ紙の合同調査で、「王位継承順位において、男女は平等であるべきですか」と問われ、そう思うと回答した人が70%、そう思わないと回答した人が17%、わからないと回答した人が12%でした。
こうした世論調査を受けて、当時の保守党デービッド・キャメロン首相は男性優先の王位継承について、「異常であり、男女平等に反する」と述べました。ニック・クレッグ副首相も「時代遅れ」と断じました。そして2011年、議会で王位継承法の改正が通過し、2013年にエリザベス女王の裁可を得て、施行されます。
このような法制定を主導したのが左派の労働党ではなく、保守党であったということ、そして、政治が多数派の世論に従ったということは留意されるべきです。
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