世界の王室から読む「女系・女性天皇」の可能性 皇位継承問題を考えるうえで知っておきたい
デンマークでも、王位継承は「男子の継承者がいない場合に限り、女子も認める」という条件がつけられていました。しかし、男女同権の観点から、2009年の王位継承法改正で、その条件が撤廃されて、男女の区別のない長子継承制に変更されました。
他の北欧諸国では、すでに長子継承制が導入されていました(1980年にスウェーデンが、1990年にノルウェー)。デンマークで、長子継承制が導入されていないのは、「後進的で不条理」、男女同権という観点からも「甚だ問題がある」という批判が巻き起こっていました。
一部、保守派からの強い反対がありましたが、世論に押され、議会は改正へと動きました。法改正を、左派の社会民主党が主導したのではなく、右派の自由党(「ヴェンスタ」)が主導したということは特筆されるべきことです。自由党の強硬派議員はいずれの改正にも、当初、反対していましたが、結局は世論に屈しました。
国民投票の結果は改正に賛成が85.4%で、反対が14.6%で、圧倒的多数で可決されました。法改正されたものの、マルグレーテ2世の長子のフレデリック王太子がすでに王位継承者であったため、王太子に変更はありませんでした。
国民投票の前に、マルグレーテ2世自身は改正に反対であったと伝えられていましたが、当時の首相アナス・フォー・ラスムセンは2005年、議会に改正案を提出する前に、マルグレーテ2世をはじめ王室のメンバーと話し合いをしたと証言しています。しかし、マルグレーテ2世がこの問題について、公式に発言したことはありません。
男系継承が残るのはスペインだけ
ヨーロッパ王室は次々と男女の区別のない長子継承制に移行しました。スウェーデンが1980年、オランダが1983年、ノルウェーが1990年、ベルギーが1991年、そして、前述のデンマークが2009年、イギリスが2013年と続きます。
現在、ヨーロッパで王室のある国は7カ国あります。この7カ国は上記の6カ国とスペインです(ルクセンブルク、モナコ、リヒテンシュタインの3公国は除く)。つまり、スペイン以外、ほかのヨーロッパ王室はすべて長子継承に移行しました。
スペインの王位継承は日本と同じく、原則として男系男子による継承です。しかし、日本と異なるのは、直系の男子がいない場合に限り、女王が認められます。この規定により、現在、スペインの王位継承者はレオノール王女となっています。スペインは19世紀の8代目国王イサベル2世の時以来の女王の登場となる見込みです。
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