世界の王室から読む「女系・女性天皇」の可能性 皇位継承問題を考えるうえで知っておきたい

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スペインではかつて、男女平等の観点から男子優先を廃止し、長子優先にしようとする動きが国会でありました。

レティシア王妃(当時は王太子妃)が男子を生む可能性が想定されて、長女のレオノール王女の継承順位が下がるのを防ぐため、早期に、法改正をすべきということでしたが、2006年にレティシア王妃の第2子が王女であると発表されたため、法改正は行われませんでした。現在のところ、国王のフェリペ6世に男子はありません。

各国で長子継承制が導入されたことにより、今後、続々と新女王が誕生する見込みです。スウェーデン、オランダ、ベルギー、スペイン、これらの国々で、王女が第1位の王位継承者となっています。ヨーロッパで王室のある7カ国のうち4カ国で、新たに女王が誕生する見込みというのは少なからず、インパクトがあります。

こうしたヨーロッパの王位継承法の改革と長子継承は、主に男女同権という観点から推進されました。これは一般社会で男女共同参画が進んだことと呼応しています。

男系派・女系派ともに真摯な議論を

ヨーロッパのこうした動向は日本の皇室とは関係がないとする見方が保守派を中心にあります。「天皇は別格」としたい人々の気持ちもよくわかりますが、民主主義において、君主を頂くという社会構造について、日本はヨーロッパと同じです。ヨーロッパで起こったことは日本でも起こりえます。

皇統の男系継承派は不利な状況になっています。男系継承の合理性とは何か、また、それを維持するための戦略はあるのか。男系継承は「伝統だから」「理屈じゃない」というのは議論や思考の放棄にも見えてしまいます。

一方、女系派は世論を味方につけ、今後も、その勢いを増していくのか、改革の論拠をどこに求めていくのか。また、女性天皇には賛成するが、女系天皇には賛成できないという人も少なからずいると思います。国民全体を含めた、それぞれの立場からの活発で真摯な議論が求められます。

宇山 卓栄 著作家

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うやま・たくえい / Takuei Uyama

1975年、大阪生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。代々木ゼミナール世界史科講師を務め、著作家に。各メディアで、時事問題を歴史の視点でわかりやすく解説。著書に『朝鮮属国史 中国が支配した2000年』、『韓国暴政史 「文在寅」現象を生む民族と社会』、『経済で読み解く世界史』(以上、扶桑社)、『民族で読み解く世界史』、『王室で読み解く世界史』(以上、日本実業出版社)、『世界史で読み解く天皇ブランド』(悟空出版)、『民族と文明で読み解く大アジア史』(講談社)など、その他著書多数。

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