日本で報じられない「バルセロナ」デモの実際 カタルーニャ州独立に対する市民の本音

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バルセロナでは今も市民によるカタルーニャ州独立をめぐるデモが行われているが、その実態は報道とは異なる部分もある(筆者撮影)

世界屈指の観光都市であり、独立問題に揺れるカタルーニャ自治州の州都バルセロナ。10月中旬には、最高裁判決に反発したデモが続き、市内の世界遺産サグラダファミリア教会が臨時休業したり、バルセロナ空港がデモ隊の占拠で機能不全に陥ったりした。警官隊との衝突や自動車への放火といった衝撃的な映像が世界に伝わり、観光への影響も懸念された。

が、問題は報道に偏りがあったことだ。今回、デモに付随した暴力が一部で存在したことは否定できない。だが、その多くは警官隊による暴力に呼応したものであり、ほぼ連日のように続いたデモが、平和的に行われたことは、日本ではあまり伝えられなかったと思う。実際はどうだったのか。独立を希求するカタルーニャ市民の思いを知ろうと、バルセロナで続いているデモの現場を歩いてみた。

デモは今も続いている

今回、デモが異例の形になったのは、香港に触発されたためだ。カタルーニャ州の独立を目指す組織「カタルーニャ国民会議」の指導者の1人、エリゼンダ・パルジ氏は、「空港占拠という手法は香港を模倣したものだ。カタルーニャが置かれた状況を世界に伝える意味では非常に有効だった」と語る。

サグラダファミリア教会などを擁するバルセロナだけに、観光業への影響が大きい空港の占拠や教会の休業という衝撃は大きく、一部で暴徒化したデモ隊の映像とともに世界に大々的に伝えられた。

これに対して、カタルーニャ国民会議の幹部は「中央政府寄りのメディアなどによって暴力の映像が意図的に強調されて伝わった。多くは警察の暴力がきっかけとなったことを理解してほしい」と話す。空港の占拠などは独立問題に世間の耳目を集めるのに成功したものの、偏ったメッセージも与えてしまったことは否めない。バルセロナ在住者は「デモが行われている場所は市内でも一部であり、平和的に行われている」と強調する。

デモは現在も、規模を縮小しながらも続いている。10月26日にも中心部の目抜き通りで行われ、地元警察の集計によると、約35万人が参加。そこで筆者も26日、デモの取材に向かった。

いつもは閑散としている郊外駅のプラットホームは、アスタラーダ(カタルーニャ独立運動の旗)を持った市民でごった返していた。子供たちは旗を羽織り、大人たちは政治談義で和気あいあいとした雰囲気。車内では、独立を支持する歌が響き渡っていた。

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