日本で報じられない「バルセロナ」デモの実際 カタルーニャ州独立に対する市民の本音

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住民投票やデモの経緯は、さまざまなメディアで報じられているが、今回のメディアによる報道では、そもそもカタルーニャの人たちが、なぜ独立を求めているのか、という点を感じ取るのが難しかった。そこで、今回約3時間に及ぶインタビューに応じてくれたカルメンさん(仮名=58歳)の声をお伝えしたい。

カルメンさんはバルセロナ生まれだが、南部アンダルシア地方から1960年代に雇用機会を求めてバルセロナに移り住んできた両親を持つ。「スペイン人というより『地中海人』としてのアイデンティティーが強かった」と言うカルメンさんは、カタルーニャに先祖代々暮らしてきた人々に比べ、政治的に中立な立場といえる。

そんなカルメンさん、「当初はスペインからの独立はまったく考えなかった」という。ところが、「まともな対話に応じず、強権的な政府の態度に嫌気が差している。スペイン各州の間での税をめぐる不公平感や、カタルーニャ州でのインフラ整備の軽視、学費をめぐる州ごとの負担感の違いなど不満は少なくない。他地域と比べて高速道路の通行料も高い」と憤る。「カタルーニャの現状に他州はそっぽを向いており、スペイン人という思いで生きてきたのに、今ではそう感じられなくなった」。

最高裁によるジュンケラス前州副首相らに対する判決については、「ますます独立を意識するようになった。政治指導者に厳しい判決を下したことは、対話の意思がないことを示している」と語る。

EUはバルセロナのデモにどう反応するか

今回のデモは空港占拠など過激な手段が目立ったが、「こうした手段によって国際的に注目を集めることになった」とカルメンさん。「バルセロナ市内だけでデモをやっても、世界に大きく報道されることはなかった。(過激な手段は)残念だとは思うけど、私たちの問題に注目してもらうには、あのような方法しかなかったと納得している」。

有罪判決を受けたジュンケラス前州副首相らへの支持を訴える横断幕(筆者撮影)

カタルーニャ国民会議の幹部は、「デモによってカタルーニャの窮状は欧州連合(EU)にも伝わった」との手応えを感じ取っている。EUは、香港のデモで中国政府の姿勢を批判してきたが、カタルーニャの平和的なデモに対するスペイン政府の強権的な姿勢を批判しなければ、ダブルスタンダードになりかねない。

だが、カタルーニャ独立の動きは、イタリアなどヨーロッパ各地に分離独立運動が波及しかねず、EUはスペイン政府寄りの立場を取らざるをえないジレンマに陥っている。独立問題は、有力指導者が軒並み拘束され、カタルーニャ自治州政府のプチデモン前首相もベルギーに逃亡中で、対話相手が事実上不在だ。

一方、独立問題が長引く中、デモの動員数も減少傾向にある。「多くの市民は仕事を持っており、いつもデモに参加できるとは限らない。デモを続けている意味がわからなくなっている市民も増えているのでは」とカルメンさんは見る。「ただ、心の中で考えていることは皆、変わらないと思う」。

池滝 和秀 ジャーナリスト、中東料理研究家

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いけたき かずひで / Kazuhide Iketaki

時事通信社入社。外信部、エルサレム特派員として第2次インティファーダ(パレスチナ民衆蜂起)やイラク戦争を取材、カイロ特派員として民衆蜂起「アラブの春」で混乱する中東各国を回ったほか、シリア内戦の現場にも入った。外信部デスクを経て退社後、エジプトにアラビア語留学。ロンドン大学東洋アフリカ研究学院修士課程(中東政治専攻)修了。中東や欧州、アフリカなどに出張、旅行した際に各地で食べ歩く。現在は外国通信社日本語サイトの編集に従事している。

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