創業67年「岡山デニム」の生き残りをかけた決断 ジョンブルが投資ファンド傘下に入った事情

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だが、SPAによる価格破壊やECチャネルの広がりなど、従来型のアパレルメーカーは急速な時代の変化に追いつけず、「アパレル不況」に苦しみ続けている。

四国とつなぐ瀬戸大橋に近い岡山県・児島地域にあるジョンブルの自社工場。20代の若いスタッフの姿が目立つ。築50年近い本社の1階にあるが、明るい(撮影:梅谷秀司)

とくにデニム業界の苦境を象徴するのが、「5大ジーンズメーカー」と呼ばれた会社の現状だ。3000~4000円台の低価格ジーンズに押され、最大手のエドウィンは事業再生ADRを経て2014年に伊藤忠商事の子会社となり、ビッグジョンやボブソンはいったん企業再生ファンド傘下入りした。リーバイスは今年10月に、アメリカにある親会社の完全子会社となることを決めているなど、変転著しい。

目指すは「日本のラルフローレン」

「ワークウェアやスポーツ分野など、アパレルじゃないところを攻めているが、(市場や会社の業績は)正直、楽じゃない」。現在、5大メーカーで唯一国内工場を持つエドウィン社長の林史郎はこう漏らす。

ジョンブルの塚田も「アパレル不況であることは否定しようがない」と言い、大類は「日本のデニムという知名度が定着した割に、児島には勢いがない」と吐露する。アパレル界はいかにも逆風下にあるが、2人がジョンブルで掲げるのは「日本のラルフローレン」(塚田)、「イタリアのファクトリーブランド」(大類)と気宇壮大だ。

「私たちは今日から家族です」

今年8月初旬に開かれた塚田、大類とプロパー社員らの懇親会の席上、塚田はそう言って社員同士の結束を呼びかけた。投資ファンドに買収され、リストラされるのではないか。そんな不安を持った社員がいたに違いないが、「その一言で距離が縮まった」(菅野)。

あれから3カ月――。ジョンブルの「再起」プロジェクトが本格的に動き出した。

(文中敬称略)

山田 徹也 東洋経済 記者

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やまだ てつや / Tetsuya Yamada

島根県出身。毎日新聞社長野支局を経て、東洋経済新報社入社。『金融ビジネス』『週刊東洋経済』各編集部などを経て、2019年1月から東洋経済オンライン編集部に所属。趣味はテニスとスキー、ミステリー、韓国映画、将棋。

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