その夜に、電話で昌平と話をした。
「気持ちを切り替えて、次に行きましょう」という私に、「何回気持ちを切り替えればいいんですか!」と普段穏やかな昌平が、声を荒らげた。
「ただね、こればかりは相手あってのことだから」という私に、「また時間と金だけ使って、パアですよ」と、吐き捨てるように言った。
そして、大きなため息をついた。
努力をしてこれまでの人生を切り開いてきた
昌平は、有名国立大学の出身。大手メーカーに勤め年収も900万円あり、結婚相手としてはいい条件がそろっている。ただ背が高くなく、ふくよかな体型をしていた。学歴や収入だけでなく、見た目を重視する女性も多い。
入会面談に来たときにこんなことを言っていた。
「人生は努力し切り開いていく、というのが信条でした。大学受験も就職試験も頑張ったから、満足する結果を得られた。だから、“結婚も努力をすれば、何とかなる”と思ってやってきましたけど、結婚だけはうまくいかないんです」
努力が結果に結びつかない。これは恋愛や結婚においてはままあること。理不尽だけれど、致し方ない。あまりにも愛情をかけると、それが相手には重たくなる。放っておくと気がないと思われる。いい人だとわかっていても、異性として好きになれないことがある。生理的に受け付けないこともある。
どんなに努力をしても、手に入らないのが人の気持ちなのだ。
昌平は続けた。
「あと、結婚相談所にいる女性たちって、本当に結婚をしたいのかなって思っちゃうんですよね。お見合いをして交際に入っても、動きが鈍いというか。1回食事をすると、次の約束が2週間後、3週間後。仕事が忙しい。資格試験を取る。海外旅行に行く。婚活している相手よりも、自分のことを優先している人が多かった。そうなると、こちらのテンションも下がってしまうんですよ」
「そんな女性ばかりだったの?」
「そうですね」
「それは、お付き合いしてきた人たちが悪かったですね。婚活市場で結婚に向けたお付き合いというのは、最低でも1週間に1回は会わないとうまくいかないんですよ。毎日のメールやLINEは必須です」
さらに言うなら、男性も女性も動きの鈍い人は、さっさと交際終了にして、次の出会いに向かったほうがいい。動けない人は、婚活をしての結婚には、向いていないからだ。
そもそも婚活市場で出会って結婚をしていくことと、生活圏内で出会って結婚していくことというのは、まったく違うことなのだ。
生活圏内で出会い結婚していく人たちというのは、スタート地点で、結婚のことを考えていない。大学でよく顔を合わせる、サークルが一緒、会社に行けば毎日会う、取引先に出向くと必ず会うなど、生活していく中で顔を合わせてコミュニケーションを取っていくうちに、人柄を知っていく。
そんな中で、何か好きになるきっかけがあり、それが恋愛へと進展していく。相手の人柄を十分にわかったうえで好きになり、2人の関係がスタートするのだ。そして、結婚へと進んでいく。
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