「竹内様とは、いい交際をさせていただいているようで、うれしく思っています。吉田としては“真剣交際”に入れたらと申しておりますが、いかがでしょうか?」
昌平には願ってもないことだった。申し出を快く受け入れ、2人は真剣交際に入った。
その後も、順調にデートを重ねていった。お互いの家を行き来するようにもなり、真知子が簡単な手料理を作ってくれたり、鍋をしたりしているという報告を受けていたので、これは結婚も近いなと、私は踏んでいた。
ところが、真剣交際に入って2カ月半が経った頃、昌平からこんな連絡が来た。
「真知子さんとは、週1のペースで会ってはいるんですが、2人の距離がまったく縮まっていない気がしていたんですね。それで、その話をこの間のデートのときにしてみたんです。そうしたら、昨夜は、こんなLINEがきました」
そこには、大まかにこんなことが書かれていた。
「距離が縮まらないのは、私が当たり障りのない接し方しかしていないからかな。昌平さんにその話をされて、昨日、“あっ、もっと私らしくいよう!”と思いました。転職もしたし、“そろそろもっと自由でもいいかな”って。そんな感じです。 なので、全然気にしないでください。お互いにあまり無理をする必要はないよ。今度会ったときに話をしましょう」
まったく的を射ない内容だったが、昌平は真知子の気持ちに変化を感じたようだ。嫌な予感がした。その週末にデートをしたけれど、お互いの距離が縮まらないことや真知子からきたメールの内容には、あえて触れないで過ごした。
デートの翌日に「交際終了」の連絡
その日は、映画に行き街をウィンドーショッピングして、デパ地下で惣菜を買い、車で昌平の家に帰った。ご飯を炊きみそ汁を作り、デパ地下の惣菜をおかずにして夕食を食べ、真知子を家に送った。
その翌日に、冒頭の相談室からの「交際終了」の連絡が私のところに入ってきた。
「やっとうまくいくと思っていたのに。僕は人を見る目がないんですかね。苦労せずに結婚している人は、いっぱいいる。どうして人が簡単にしていく結婚が僕には、できないんだろう。何かもうここまで頑張って結婚できないなら、しなくてもいいのかなって気になりますよ」
交際がダメになったときには、思っていることすべてを吐き出してもらう。どんな愚痴も、とことん付き合って聞く。それも仲人の仕事だと私は思っている。
私は昌平に言った。
「結婚してこそ一人前という考え方は、もはや古い。今や結婚は個人が選択をする時代ですからね。1人で生きていこうと思うなら、それはそれで腹をくくればいいんじゃない?」
それから3日後。
「結婚しなくてもいいかな」と言っていた昌平だったが、相談所協会のサイトから30件のお申し込みをかけてきた。
まだまだやる気らしい。そんな彼の背中を私は押し、伴走していく。真知子との交際はダメだったけれど、この調子で動いていけば、いつか結婚できる日が来ると、仲人の経験則から感じているからだ。
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