若干の延期もブレグジット実現は見えてきた ジョンソン首相の離脱法案を議会が支持へ

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「離脱しなければ総選挙だ」と必死の説得を行ったジョンソン首相(写真:©UK Parliament/Jessica Taylor/Handout via REUTERS)

2016年6月23日の国民投票からちょうど3年4カ月、先の見えなかった英国の欧州連合(EU)からの離脱協議が決着の時を迎えている。

英国とEUは17日に新たな離脱条件で合意し、急転直下の10月末の離脱実現に向けて動きだしていた。英国が合意に基づいてEUを離脱するには、下院が合意内容を承認することに加え、合意内容を実行するための関連法案を上下両院で成立させなければならない。37年振りとなる土曜日の議会開催となった19日の合意受け入れの是非を問う4度目の採決は、合意受け入れ時もボリス・ジョンソン首相に離脱期限の延期要請を義務づける修正動議が事前に通ったことで、本採決の実施が見送られた。

政府は21日月曜日に改めて5度目の合意受け入れ採決の実施を目指したが、3月に3回目の採決実施が阻止された時と同様に、同一会期内に同じ内容の採決を禁じる17世紀の議事規則の判例に基づき、ジョン・バーコウ下院議長が採決実施を認めなかった。

議会は離脱案の大枠を支持も、拙速な成立にノー

10月末の離脱実現をあきらめないジョンソン首相は同日、110ページに上る離脱関連法案を提出し、わずか3日間の議会審議でその成立を目指す議事日程を提案した。2018年に成立した別の離脱関連法案の成立には、通算で38日間の議会審議を要した。英議会は通常月曜日から木曜日に開催されるため、これは2カ月半に相当する。

21日に同法案が読み上げられる第一読会が行われ、22日には法案の全体的な原則を審議する第二読会に進み、討議後に賛成329・反対299の賛成多数で離脱案の大枠が支持された一方、わずか3日で下院通過を目指す議事日程の採決は賛成308・反対322の反対多数で否決された。

法案の成立には今後、委員会での逐条審議とそれを本会議に報告する審議の後、第三読会で最終的な採決が行われ、これが賛成多数で可決されると下院を通過する。下院を通過した法案は上院に送られ、同様のプロセスを経て必要に応じて修正が加えられる。修正後の法案は上下両院を行ったり来たりし、一本化した法案を両院で可決した後、女王陛下の裁可をもって成立する。

今後、野党勢力は、逐条審議・報告審議・第三読会の各段階で、離脱内容の受け入れ是非を問う国民投票の実施や離脱後もEUの関税同盟に残留することを求める修正動議を提出することが予想される。ただし、こうした修正案が議会の多数意見となる可能性は低そうだ。

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