名古屋の隣にある「村」の日本一リッチな懐事情 「小さな村・地方の都市」の知られざる実力

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社会保障も手厚い。18歳までの子ども医療は医療保険の自己負担額を村が助成、後期高齢者医療制度の被保険者の自己負担額も助成される。夫婦どちらかが40歳以下、住民登録から継続して6カ月以上経過といった条件をクリアすれば、婚姻時に5万円の結婚祝い金が出る。

さらに、長寿のお祝い金も半端じゃない。長寿奉祝金として満90歳で20万円、95歳で50万円、100歳ではなんと100万円が贈呈されるのだ(※基準日に20年以上居住が条件)。

豊かな財政を未来を担う子どもたちに投資し、村に貢献してきた高齢者にはお祝い金で還元。お金だけではない、心も日本一リッチな村である。

生乳生産量、日本一の町

北海道東部・中標津空港から車で30分ほど。オホーツク海に面した別海町は酪農王国・北海道の中でも1番の牛のまちである。2018年2月現在の牛の飼養頭数は11万1285頭(2018年2月)。このうち10万3699頭が乳牛である。乳牛を飼っている農家(乳用牛飼養戸数)は708戸だから、1戸当たりの飼育数は146頭という大規模経営だ。同町のサイトによると、生乳生産量は48万2221トンで日本一である。

ちなみに全国の乳牛の飼養頭数は約133万頭だから、別海町だけで7.8%を占める。1戸当たりの飼育数の全国平均は84.6頭(2018年)。別海町の酪農家は、全国平均の1.7倍の牛を飼育しているのだ。

別海町の酪農は、1956(昭和31)年に高度酪農集約地域に指定されて以来、第1次、第2次の農業構造改善事業、新酪農村建設事業を通じて、機械や施設の大型化が進んだ。最近では、最新の搾乳ロボットを導入して搾乳量を大幅に増やす牧場も出てきている。2018年の北海道胆振東部地震による道内のブラックアウト時には、自家発電で搾乳を続けた牧場もあったという。

そんな日本一の「乳牛のまち」にも人口減少の波は押し寄せている。2019年9月末の人口は1万5015人。1960年(昭和35年)のピーク時は2万1878人だったから、3割以上も減ってしまった。世帯人員も減り、核家族化が進行した。酪農家にとってもまち全体にとっても、酪農の担い手確保が重要課題だ。

そこでまちは、研修から新規就農までサポートする別海町酪農研修牧場を設立。研修生には牧場の職員として研修手当(総合職は月額17万円)が支払われ、3年間の研修を終えると、新規就農する際にはさまざまな助成金が受けられるシステムが整っている。その結果、1997年から2016年までに72組が新規就農を果たしたという。未来につながる酪農王国の取り組みが注目される。

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