名古屋の隣にある「村」の日本一リッチな懐事情 「小さな村・地方の都市」の知られざる実力

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長野県南部、岐阜県との県境にある阿智村は人口約6600人の小さな村で、東京からは中央道経由で3時間半、名古屋からは1時間半というロケーション。1973年に鉄道建設工事のトンネル掘削のボーリング工事中に温泉が噴出し、1988年に昼神温泉観光センターが設置されたが、知名度が低く東京から遠いこともあり、年間の観光客数は延べ7824人(昼神温泉=2003年)と冴えなかった。

そんな過疎の村に大きな光が差したのは2006年のことだった。環境省の全国星空継続観察で、阿智村は「星の観察に適していた場所」の全国1位に輝いたのだ。

村は2012年から「日本一の星空ナイトツアー」をスタートさせたほか、星空を見上げるイベントや場所づくり、環境活動などを展開し、星空の村として全国的な知名度を獲得するまでになった。2018年には村内で開催された星空関連イベントの累計来場者数が50万人を突破している。

世界に向けて「星空の村」をアピールするため、2019年5月には世界記録チャレンジイベントを開催し、2640人が同時観測に成功し、ギネス世界記録を達成した。従来の記録はオーストラリアで認定された1869人だったから大幅更新だ。「日本一の星空の村」は「世界一の星空の村」へと進化したのである。

日本で最も本好きは岡山県民? 

知の分野で注目は岡山県。2018年度の日本図書館協会の調査で、岡山県立図書館の年間来館者数、個人貸出冊数合計(年間)が、ともに全国の都道府県立図書館中第1位だった。来館者数は98万9077人、個人貸出冊数は141万0737冊だった。

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これで同図書館は2005年度から14年連続で全国1位を獲得したことになる。全国平均(2018年度)は来館者数が約37万5000人、個人貸出冊数が約35万4000冊だから、岡山のすごさは一目瞭然だ。

全国1位達成の理由について岡山県立図書館は、豊富な蔵書や好立地、専任職員によるきめ細かなサービスの提供、タイムリーな企画図書展示や各種イベントの開催を挙げている。スマホ依存が進み、本を読む層が減っていく中で、貴重な日本一である。

若者流出、人口減、高齢化、限界集落。最近は地方の疲弊ばかりが伝えられるが、ここに紹介したように、小さな自治体でもふるさとの資源、自然、パワー、そして住民たちの知恵や行動で、輝く自治体がたくさんある。地域の強みを改めて見つめ直し、全国各地のふるさとがもっともっと輝いてほしい。

山田 稔 ジャーナリスト

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やまだ みのる / Minoru Yamada

1960年生まれ。長野県出身。立命館大学卒業。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。経済、社会、地方関連記事を執筆。雑誌『ベストカー』に「数字の向こう側」を連載中。『酒と温泉を楽しむ!「B級」山歩き』『分煙社会のススメ。』(日本図書館協会選定図書)『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』などの著作がある。編集工房レーヴのブログも執筆。最新刊は『60歳からの山と温泉』(世界書院)。

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