伊東孝紳・ホンダ社長--CO2削減目標は厳しいが是が非でも克服していく
運営の基本理念は三つの喜び
--社長就任直後、ホンダらしさを大事にすると強調されました。
本田宗一郎は世間のお客さんが潜在的に待ち望んでいるもの、困っているものをどれだけ早く、期待値以上の製品として提供できるかということを徹底してやっていた。
かみさんが困っているからエンジン付きの自転車を作るとか、みんなが欲しがるからオートバイを早く作って乗ってもらおうとか……。(最後発だった)4輪だって、もっとうちらしくて面白い4輪をどんどん造ってやる、と。
ホンダの運営の基本理念である三つの喜び、すなわち「作って喜び、売って喜び、買って喜び」。これだと思うんです。お客さんに喜ばれると造っても楽しいじゃないですか、あーよかった、やりがいあったね、と感じたい。
--そのホンダらしさを追求するのに足りないものはありますか。
お客さんに対してちょっと距離が遠くなった可能性はある。たとえば、毎日本社に出社して、机の前の仕事をこなして給料が出ちゃうというようになっている、残念ながら。
創業時と今とでは規模の差はある。でも、お客さんから見たら本田宗一郎がやっているホンダであろうが、今のホンダだろうが関係ない。期待値は変わらない。
福井(威夫前社長)がやってくれたインサイトは、お客さんを強く意識した象徴として出た車だ。ハイブリッドに対する期待値に対して払える価格をまず設定した。今までは、ハイブリッドを造ります、先進技術だからこれくらいのコストになります、だから売価はこれくらいです、というやり方だった。今回はその考え方を変えることを前提に造った。